【コラム】介護ロボットの着眼点

補助金政策による光と影

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2016年7月25日(月)

介護ロボットコラム008:補助金政策による光と影

前回のコラムでは「補助金のメリットとデメリットは?」と題して、補助金制度にはメリットがある一方でデメリットがあることを指摘しました。特に、施設側の購入意欲に対する影響の実態について書きました。

 

ところで、厚生労働省 平成27年度補正予算の「介護ロボット等導入支援特別支援事業」では、今回、補助の金額が減額になり、様々なトラブルが起きました。しかし、実態は、申請した全法人にお金が配分されるよう配慮したところ、原資が不足したため、当初の300万円という上限額が減らされたに過ぎません。申請した施設や売上を当て込んだメーカーをはじめ、関係者から不満が出てトラブルになったとはいえ、申請したどの施設運営法人も減額対象になったので、処置としては「平等」だったのです。減額されたとはいえ、補助される権利(購入費補助)は申請した全ての法人に平等に行き渡ることになったのです。

 

補助金制度という蜜に人が群がってくる構造は、どの業界でも同じですが、お金が絡むだけに常にトラブルにも発展しがち。介護ロボット等導入支援特別支援事業では、「減額」されるという結果に至ったとはいえ、誰かが得をした訳でもなく扱いは「平等」であることには変わりないのです。国が平等になるよう対処したのですが、それでも怒りの矛先は関係者に向けられたのでした。

 

ところが、介護ロボット等導入支援特別支援事業のように一定の条件をクリアした全ての申請者が平等に補助される制度と異なり、一部の施設だけが恩恵を受ける補助金制度だと、大きなトラブルに発展する可能性が高いでしょう。なぜなら、平等ではないからです。どこの施設も同じように時間を割いて申請書を作成・提出したにも関わらず、経済的な恩恵を大きく受ける施設がある一方で、何も恩恵を受けない施設が出てくるからです。目に見える明らかな「格差」があまりも極端で大きいからです。

 

例えば、ある自治体で今夏から実施されることになりますが、介護ロボット購入費の補助制度があり、申請した多数の中から選ばれたわずか数施設だけが数百万円以上の経済的な恩恵を受ける一方、他に申請した残りの施設には何もメリットがない支援策があります。補助金という原資が平等に配分されるのではなく、ごく一部の施設だけに集まるため、そこだけが格段に恵まれた購入補助費用をゲットできるのです。

 

申請した施設の数が多ければ多いほど、「あんな〇〇施設が補助対象になり、なぜウチがダメなのか?」「〇〇議員にもお願いしたのに、なぜウチが選ばれないのか?」などの類のクレームが多く寄せられるでしょう。「〇〇〇選考会で決まった!」と主張したところ、密室で行われる審査会はどうしても透明性に欠けるもの。不満の矛先は関係者に向けられるはずです。

 

大きな金額(購入費補助)がごく一部の施設だけに流れこみ、しかも、明確な審査基準など公表されないまま。このような場合、不満を申し出る施設はなかなか納得することがないでしょう。

 

一定の条件さえ満たせば、どの施設に対しても平等に分け与えられる権利(補助金)とは異なり、一部の施設だけが恩恵を受け、おまけに恩恵を受けられなかった施設とのメリットの差が激しいと、後に大きなトラブルになる予感が・・・・。

 

 

過去を振り返ると、自治体の支援策の中には、(施設の絞り込みではなく)補助対象のロボット機種を絞り込むというケースがありました。その際は補助対象機器として選ばれるための基準が明確でした。しかし、それでも基準の解釈をめぐってすったもんだがありました。

 

このように補助金政策には光と影が付きもの。そんなの中、介護ロボットの購入費補助制度については、購入費を補助するだけではなく施設向けの教育にもっとカネを使い、しかも、選ばれた一部だけではなく、「はい!」と手を挙げた施設に対して平等に権利が与えられる支援策の方が良いと考えています。

 

また、せっかく既存の購入費補助事業があるにも関わらず、別途、新たに異なる補助事業を作るという「バラバラな補助金政策」は良策とは言えないでしょう。本来なら、複数ある補助金制度がそれぞれ有機的に活かされる策を検討すべきです。

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