【コラム】介護ロボットの着眼点

介護ロボット

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2018年 2月 24日(土)

介護ロボットコラム027: ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは

毎年、今の時期になると自治体の次年度予算がほぼ固まります。そこで各自治体のホームページに公開されている平成30年度の予算関連の資料をさっとチェックしてみました。介護ロボット関連については、積極的に取り組もうとする自治体がある一方、そうではないところがあります。また、取り組み内容は同じにも関わらず、「ロボット」という表現を使わずに「ICTを活用して…」などと表記している自治体もあります。

とにかく、自治体の介護ロボット関連の取り組みについては大きく3つに分類することができるかと思います。それは「開発支援」「導入支援」「実証支援」の3つです。

 

1つ目の「開発支援」はメーカー向けのモノづくり支援で、主たる目的は産業育成・振興となります。

2つ目の「導入支援」は施設向けの支援であり、主たる目的は介護分野の課題解決です。介護人材不足を補う(生産性向上の)手段としてロボットが期待されており、それの導入を促すための取り組みが行われているのです。「導入支援」の取り組みの中で目立つのは地域医療介護総合確保基金を使った購入費の補助です。また購入費を補助するだけではなく、それに追加して介護ロボットの講演や展示のイベントを1-2回程度開催することを計画している自治体もあります。

3つ目の「実証支援」については、開発・モノづくり支援の一環として行なうものと、特定の機種をモデル指定した施設に導入して成果を検証するという施設向けの事業があります。つまり、支援先の対象として、メーカー(作り手)を意識しているか、あるいは施設(使い手)かという違いがあるのです。

このように自治体からは様々な取り組みが発表されていますが、介護ロボットの普及には絶対に欠かせない取り組みとして、前々から痛感していたことがあります。

 

国では「エビデンス(証拠)が必要だ!」ということで介護ロボット活用の成果を実証・実験する動きがあります。確かにこれは国が介護保報酬改定の議論をする際などに必要な基礎データとなります。

しかし、もっと重要なことが欠けているのではないでしょうか? データ取りをして「●●が何パーセント向上しました!」などと学術的な評価をすることも重要ですが、それは「活用する」という「一見すれば当たり前のこと」が「できている」という前提条件をクリアした上での話です。

実証・実証のために、職員に無理に使ってもらい、体裁の良いデータを集めて報告書を作成することは可能です。しかし、実験のために我慢して使ってもらったものの、それが終了したら「実証実験が終わったので、ウチではもう使いません!」では全く意味のないことではありませんか?

これでは粗品(?)を貰って期間限定で施設がデータ集めに協力しただけにすぎません。

しかも、そこで集めたデータが次なるアクションに活かされるようあらかじめ計画されていれば良いのですが、報告書を書いてオシマイ、しかも次年度には課長も担当者も変わってしまい…新しい人は新たな提案をして…などと、戦略やロードマップがないまま政策が目移りする状態になっていないでしょうか?

本来であれば、施設の日々のオペレーションの中でロボットを日常的に活用してもらえるようにすることが必須です。データ収集時やお披露目のイベント時にだけ使ってもらうのでは意味のないことです。そして施設が、ロボットを活用し、掲げた目標に少しでも近づけるようになれば、それは素晴らしいことです。

掲げた目標に達成することができれば、購入する施設の数が増えることになります。また、それに比例するごとく出荷数が増えます。結果として売上増となりメーカーや販売店にとっても嬉しい限りです。

 

だから、学術的なデータ集めなど介護保険制度の見直しに影響を与えるような事案は国事業に任せておき、各自治体では深刻化する介護分野の課題解決に向けて、むしろ使う側の施設のメリットや育成を優先した取り組みが必要ではないでしょうか? 

というか、縦割り行政なので仕方がないとは言え、国のマネごとをするごとく横並びで似たり寄ったりのことをするだけではなく、もっと独自性を出して自ら棲み分けをしても良いはずです。

「施設は一体、何を求めているのか?」

「いつまでにそれを実現させたいのか?」

「(ロボットの活用によって)実現できるのか?」

「目標を達成するためには、ロボットをどう活用すべきか?」

「どうように実現できたかどうかを管理するのか?」

 

こういうことを明らかにした上で、目標達成に向けてロボットを上手に活用しながらPDCAをまわすことができる組織を構築することが重要なはずです。

PDCAをまわせる組織(施設)が構築できれば、仮にロボットの活用が初めのうちは上手くいかなくても、直ぐに軌道修正して掲げた目標に向かって走り出すことができますから。

また、こういうPDCAをまわせる組織が構築できれば、ロボットの活用に限らず、オムツ代の削減、インフルエンザ発生時の緊急対応、施設のICT化など、今後も対応が迫られるあらゆる課題にスムーズに対応できるようになります。

ところが、組織(施設)運営を進めていく上で礎となる土台が脆弱だと新しい取り組みがなかなか浸透しないはずです。これは施設と深く関われば関わるほど私が痛感したことです。

脆弱な組織にモノを与えるだけの施策ではなく、土台を強化してあげる取り組みが必要ではないでしょうか? また「生産性が云々…」などと語る前に、その生産性を測るためのモノサシ(指標)を与え、その必要性や使い方などを理解してもらうための取り組みが必要です。

介護ロボット市場開拓のマーケテイング

【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛び付く前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると