【コラム】介護ロボットの着眼点

介護ロボット

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2018年 7月 18日(水)

介護ロボットコラム031: 介護ロボット販売で先にやるべきこと

介護ロボットの販売現場では、各メーカーや販売代理店が製品の機能や操作方法を説明することが当たり前のように行われています。しかし、「見込み客」を前にした時、「今すぐ客」と「これから客」の違いを意識し、情報を出し分ける必要があるのではないでしょうか?

私は介護ロボット関連の講演・セミナーの講師を既に何十回も行ってきました。勉強会の類を含めると100回は超えています。最近では講演・セミナーの冒頭、参加者に挙手してもらい「導入状況」を確認するように努めています。2018年に入ってからだけでも、民間企業の主催分を含め、10回以上も介護ロボットセミナーで話をしています。

毎度のことですが、少し驚くことがあります。それはいまだに「ロボットを導入していない」状態どころか、「どのようなロボットがあるのかまだよく知らない!」という介護職員が少なくないことです。

つまり「介護ロボットにはどんな製品があるの?」という段階の人がまだ少なくということです。私が昨年に参加したあるイベントでは、某施設の施設長さんが「ロボットが来るということで、早速、次の日からさぞかし業務が楽になるかと思ったけど、楽になるどころかもう大変で・・・」と、期待を大きく裏切られたことを発言されていました。

このような発言からもわかる通り、意外にもまだ介護ロボットについては知られていないようです。

そのような中、ロボットの販売方法に関し、前々から私が気になっていたことがありました。それは販売側が「これから客」に対して「今すぐ客」に提供すべき情報を出していることです。本来なら「今すぐ客」と「これから客」とのステータスの違いを意識し、情報を上手く出し分ける必要があるはずです。

「今すぐ客」は、「買うつもりだが、ABにするか迷っている」「だからもっと知りたい!」などという人です。他社製品との比較検討をしており、すでに導入意欲が高いと思われる人です。このような「今すぐ客」に対しては、操作方法(使い方)、機能面、導入事例などの情報を提供すれば良いのです。

でも、図に示した通り、「今すぐ客」はピラミッドの上に位置する人であり、人数が限られています。そして「今すぐ客」の背後には、その何倍もの「これから客」が控えています。

3倍や4倍どころではありません。少なくても数十倍以上は控えています。そのような「これから客」へ提供する情報は「今すぐ客」向けのものとは異なるはずです。

ここで話は少し逸れますが、例えば「ほうれん草」や「トマト」と言えば、殆どの人がすぐにイメージすることができるでしょう。それをどう使えば良いかも多くの人が直ぐにイメージすることができます。ところが、非常に珍しい変わった野菜だと「何、それって?」となります。特に、カタカナ名だと人の頭になかなか入ってきません。事実、私の場合、英語名なら直ぐに頭に入ってきますが、フランス語やドイツ語だと1回、2回言われただけではわかりません。

だから野菜を売る事業者(売り手)は、「栄養面ではこのようなメリットがあります!」「レシピにはこのような例があります!」「A子さんは○○料理に使っています!」などと、わかりやすく情報を発信する努力をしています。これは消費者(買い手)に認知・理解してもらうための取り組みです。

今まで消費者(買い手)には見えていなかったものを「見える」ようにしてあげているのです。そうやって、消費者(買い手)の頭の中にインプットして「気付いてもらう」「注意を払ってもらう」という活動を、「売り手」は自社マーケティングの中に取り込んでいます。

 

これと同様ですが、介護職員にとって見慣れぬ「新しいモノ」を販売する際は、見込み客に「教えてあげなければならないこと」や「先に理解してもらった方が良いこと」があるのではないでしょうか? それはいきなり特定製品の機能や操作方法を説明することではないはずです。

ところが、よく見られる問題は、「これから客」に対して「今すぐ客」に提供すべき情報を出していることです。「今すぐ客」向けの情報を提供することで、「期待感を高めてもらう」というのではなく、「難しそうだ!」「面倒だ!」などと否定的なイメージを先に与えてしまっているかもしれません。そして、それが障害となり、それ以降は特別のキッカケ(例:補助金)でもない限り、次のステップへ進んでもらえないことがあるのでないかと思われます。

だからこそ、これまで見えていなかったことに「気付いてもらう」「注意を払ってもらう」ためには、買い手に「見える」ようにしてあげる工夫が必要なのです。

介護ロボット市場開拓のマーケテイング

【No.33】介護ロボットはキャズムを越えられるか?
【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
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【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛び付く前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
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【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
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【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
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【No.8】補助金政策による光と影
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【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると