5分でわかる介護ロボ市場のポイント

「5分でわかる介護ロボット市場のポイント」と題して、次の6つに分けて説明します。

はじめに

このページでは「5分でわかる介護ロボット市場のポイント」と題して6つのカテゴリーに分けて紹介しています。

早速、「1 ロボット」「2 介護ロボット 注目の背景」「3 介護ロボット普及に向けた国や自治体の支援策」「4 介護ロボット市場の現状」「5 普及に向けた課題」「6 介護ロボット市場の今後」と順に説明します。

  • 今、介護分野に限らず、さまざまな分野でロボットの活躍が期待されている。ロボットは「産業用」と非産業用の「サービス用」の大きく2つに分類できる。

ロボットの種類 産業用ロボット サービスロボット

  • 「サービスロボット」には、医療、介護・福祉、清掃、受付・案内、教育、レスキュー、家事支援などがある。「介護ロボット」は「サービスロボット」の1つに分類される。

  • 今後、ロボット産業が成長していく中で、特にサービスロボット市場の伸びが期待されている。産業用ロボットの市場はまだ伸びていくが、サービスロボットの市場は2030年頃までに産業用ロボットを凌ぐ規模にまで成長すると期待されている。

 

  • サービスロボット市場がロボット産業全体(市場規模:8,600億円/2013年)に占める割合は、2013年の時点ではわずか7%(600億円)に過ぎなかった。経産省・NEDOによると、これが2020年には36%(1兆円)、そして2025年には50%(2.6兆円)とロボット産業全体の半分を占めるまでに成長すると試算されている。

 

  • 介護ロボットは、「福祉用具」でもなく「医療機器」でもなく、位置付けがまだ宙ぶらりんな状態。
  • 日本の介護分野を取り巻く状況は、「高齢化」「介護人材の不足」というキーワードで括ることができる。

  • 高齢化率は上昇を続け、2020年には29%、2025年には30%を超えて、2060年には約40%に達する見込み。

  • 2000年に介護保険制度がスタートしてから介護職員の数は毎年増えてきた。今後も増加していく。しかし、今のまま増え続けても、人材の需要と供給には2025年に約30万人、2035年には68万人ものギャップが生じると試算されている。

  • 慢性的に人手不足に悩まされているのが介護業界。今後、労働力人口が減っていくこともあり、問題はさらに深刻化していく。そこで、1)高齢者や女性を活用する、2)外国から労働者を連れてくる、3)ロボット技術を活かす、4)業界のイメージアップを図る、などといった取り組みを通じて解決しようとしている。

 

  • 「介護分野の課題解決」だけではなく、「新産業の育成」という理由からも介護ロボットには大きな期待が寄せられている。介護ロボットは、ロボットとして「産業振興的」な側面がある一方、介護という「高齢福祉的」な側面を持ち合わせている。ロボットという表現は必ずしも介護現場に歓迎される用語ではなかったが、産業促進側の思惑もあり「ロボット」という表現が定着した。

  • 介護現場は「ロボットありき」ではない。介護現場に求められているのは課題の解決である。介護業界の恒常的な課題は人材確保。景気が良くなると、人材確保が困難になる。

 

  • 介護現場では先端機器よりも実用的なモノ(ロボット?)が求められている。介護分野が直面する課題に関する解決の一つの選択肢として「介護ロボットの活用」があるが、一方で「新産業の育成」という面からの期待がとても大きい。
  • 介護ロボットの普及に向けて、国や自治体がさまざまな支援策を打ち出している。

  • 国では主に経済産業省および厚生労働省が介護ロボット普及の旗振り役を担っている。第二次安倍内閣が掲げる成長戦略では、2013年(平成25年)6月に「日本再興戦略」が閣議決定された。日本再興戦略では、「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」が盛り込まれ、成果目標が設定された。その一つがロボット介護機器の市場規模を2020年に約500億円、2030年に約2,600億円にするということ。

  • 経済産業省と厚生労働省では幅広い製品群が対象となる介護ロボットに対して重点分野を定めて開発支援を行っている。重点分野は5分野8項目ある。1)移乗介助機器(装着型)、2)移乗介助機器(非装着型)、3)移動支援機器(屋外型)、4)移動支援機器(屋内型)、5)排泄支援機器、6)入浴支援機器、7)見守り支援機器(介護施設型)、8)見守り支援機器(在宅介護型)、である。

  • 国や自治体は単年度単位で予算編成され、それに合わせてさまざまな事業が政策立案される。事業(支援策)の名称はそれぞれ異なるものの、介護ロボットの普及に向けた国や自治体の支援策は、1)開発支援、2)試験導入・実証実験、3)購入補助、4)リサーチ、5)普及推進活動、に大きく分類することができる。

 

  • 産業育成という政策からロボットメーカー向けの開発支援メニューは以前から豊富である。しかし、最近では厚労省の介護ロボット等導入支援特別事業(平成27年度補正予算)による全額補助をはじめ、ロボットを購入する介護施設に対する購入補助の制度が充実してきている。

  • 普及推進活動には、介護ロボットの展示・説明会をはじめ、活用現場の公開、体験会などさまざまな取り組みが該当する。一部の自治体では将来の介護人材確保の目的で、社会人のみならず子供に対しても介護ロボットを知ってもらう取り組みをしている。

  • 介護ロボットの認知度は格段に高まってきている。しかし、数万円程度のロボットであればそれなりの出荷数があるが、普及はまだまだ。国や自治体の補助事業などを通じて市場は形成されつつあるが、本格的な普及はこれからである。

  • 「導入されている!」といっても、介護施設が全額ポケットマネーを出した購入ではなく、国や自治体などの補助・助成を受けた導入が多い。あるいは、期間限定で実証事業に協力する形での導入ケースがまだ多い。つまり、(統計的なデータはないが)市場規模を金額ベースでみれば「買い手」の自己負担に比べ、公費負担が占めるウェートが高い。別の言い方をすれば、現在(2016年)のところ補助金に依存しながら市場が形成されているとも言える。

 

  • ロボットメーカーの売上は、国や自治体から直接あるいは間接的に獲得する公費に依存して計上されている状態である。一方、「買い手」である介護施設には、いくつかの購入パターンが見られるが「国や自治体の補助・助成事業を当てにした購入」が多くを占める。つまり、公費の投入により、モノ(ロボット)が動いている状態。

  • 大小さまざまな事業者が参入して玉石混交の状態である。繰り返すが、今のとこころ市場で大きな割合を占めるのが国や自治体事業の補助による導入となる。

  • 国や自治体がこれまで実証事業などに採択したロボットをよくチェックしてみると、どこの自治体でも同じような機種が採択されがち。つまり、先駆的に取り組んだ自治体に採択されたロボットを追随する形で他の自治体が同機種を採り入れて支援事業を展開する傾向がある。

  • 縦割り行政のため、介護ロボットの普及については、複数の自治体が時間差で似たり寄ったりの事業を展開している。施設は国事業であっても地元自治体を通じて購入補助を受ける。一方、自治体事業に採択される(協力する)メーカーは地元企業に限定されないケースが多い。そのため、メーカーは、アービトラージの如く、ロボット事業に時間差で取り組む各自治体から、次から次と補助を貰い歩くことも可能である。

  • 国や自治体が導入費用を全額負担してくれる事業に参加する場合、メーカー側が高い価格を設定しても(受入施設のかわりに)補助事業を実施する国や自治体が(ロボット導入の)費用を負担してくれる。その結果、国や自治体事業への参加は、メーカーにとって容易に売上を計上しやすく、かつ価格競争に巻き込まれる心配がない。(公費により)言い値で導入してもらえる非常に都合の良い状態(制度)となっている。

  • 以上の通り、介護ロボットは「売り手」も「買い手」も補助金に依存することで成り立つ補助金依存型の市場が形成されているのが今の現状である。この体質は、結果的に業界に対して普及を加速化させるポンプの役割を果たすかもしれない一方、経営努力を怠らせるキッカケになってしまうだけかもしれない。

 

  • 現在、さまざまな企業が市場参入を検討しており、今後は大手を含め多くの企業の参入が予想される。今のところ競争が激しい(開発件数が多い)のが見守り系。大手から個人事業主に至るまで多くの企業がさまざまな製品を開発している。一方、ニーズがあるのに、参入事業者が少ないのが装着型の移乗介助。これは、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の採択案件も見ても明らかである。

  • 参考までに、矢野経済研究所の調査によると2013年度の(介護ロボットではなく)介護福祉用具用品市場の市場規模は、2,726億円(メーカー出荷金額ベース)。そして、これが2020年度には2,996 億円に達すると予測している。因みに、​「介護福祉用具用品」とは、在宅や高齢者施設、介護療養型病院など医療機関で利用される福祉用具・介護用品を指し、同市場規模は在宅用介護ベッド、エアマット・体圧分散マット、車いす・電動車いす、歩行器・歩行車・シルバーカー、移動用リフト、特殊浴槽、入浴用品・排泄用品、大人用紙おむつ、失禁関連布製品等を対象としている(除:医療機関向けベッド)。
  • 介護ロボットがなかなか普及しない問題点は「ロボットの価格がまだ高い!」をはじめ多々あるが、課題を大きな一つに絞り込むと”ギャップ”となる。

 

  • 課題については「価格が高い!」「使い勝手がまだイマイチ!」など”作り手”であるロボットメーカーに起因するものが指摘されがちである。しかし、”使い手”となる介護施設に起因する課題もある。

介護ロボット市場 最大の課題は?

なお、「普及に向けた課題」については、「よくある質問」ページで詳しく解説しています。

以下は、あくまで関口の個人的な見解です。

 

  • 現段階は公費負担により小さな介護ロボット市場が形成されている状態である。現場が求めている理想の製品というよりも、国や自治体の支援事業(補助事業)に採択されたロボットが市場に出回り注目を浴びる格好となっている。

 

  • 収入の大半を介護報酬に頼っている施設は、経営面でも体質的に公費に依存しがち。国や自治体が購入費をまかなう形で市場が形成されつつあるが、投資という感覚で介護ロボットを購入する施設の割合は非常に少なく、あくまで補助金に依存しがち。

 

  • 「売り手」であるメーカーがロボットの機能面や価格面についてさらなる努力をする一方、施設の方も受身ではなく自らも多少なりともリスクを負う感覚でロボットを活用しようとする経営努力の必要があるのでは? さもないと、市場が補助金依存型から抜け出せないまま。在宅市場という大きな伸びしろがあるが、施設市場に関しては開拓に少し時間が掛かり過ぎてしまう恐れがある。

  • 介護ロボット市場は、大きく二つのセグメントに分かれて形成されていくと予想している。一つは、介護保険の給付対象となり福祉用具の延長上の如く形成される市場。もう一つはコモディティ化した家電のような市場である。別な表現をすれば、介護保険制度に組み込まれる「規制された保護市場」と資本主義的な「自由競争市場」が形成されるとも言える。さらに、第三のセグメントとも言えるが、介護ロボットの領域を脱して医療機器に衣替えする機器や、保険に依存しない高価格・高付加価値な機種も出てくるはず。

 

  • 福祉用具の延長上の如く形成される市場については、介護ロボットの「購入」や「レンタル」に介護保険の給付が期待されており、実現すれば時間の経過と共に給付対象の範囲が広がることが期待される。しかし、各方面との調整に時間が掛かるはず。どのタイミングに、どの範囲(機種)まで介護保険の対象になるのか? 2018年度? これが市場拡大のスピードに大きな影響を与える要因の1つになると思われる。

 

  • 介護保険は皆が使えるわけではなく、要介護認定調査を受けて「要介護2」や「要介護4」などと認定された人だけが使える制度。社会保障費の財源が限られている中、介護ロボットに費やせる公費は必然的に限られる。そのような点から、福祉用具の延長上の如く形成される市場は、制度よって保護される(給付対象の品目以外は保険適用にならないという参入障壁がある)が市場規模の拡大には限界がある。しかも公費負担(いわゆる手厚い保護)によりロボットメーカーの国内外の市場における競争力を弱める恐れがある。

 

  • 要介護にはならなくても「ちょっと不自由な高齢者」の数は大きく増加する。そこで、コモディティー化した家電のような市場も形成され大きく成長していくはず。こちらはまさに玉石混交で熾烈な競争市場となる。しかし、ロボットメーカーの国際競争力が強化されれば、海外市場へ飛躍する足掛かりとなるはず。

 

  • 流通チャネルに関しては、今のところ医療機器や福祉用具を扱っている事業者が補助金制度に群がる如く代理店や特約店として名乗りを上げている。しかし、単なるモノ売りだけでは市場開拓が難しく、既存の販売手法に品目追加する程度のやり方では市場開拓が難しいと思われる。それは既存ユーザーから新規ユーザーへのノウハウ共有が不可欠だからである。そういう点からも代理店業を担う施設の登場が市場開拓において大きな役割を担うようになってくるはず。

 

介護ロボット市場開拓のマーケテイング

【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
【No.30】成功への第一歩はメニューに載ること?
【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛び付く前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると