人間だけで行っていた介護業務が変わる!

「モノ」の提供だけでは解決しない!

3つ(2つ)のステージ

これまで国や自治体では、メーカーに開発費を補助する一方、施設には購入費を補助する施策を積極的に行ってきました。

施設向けに限った支援を見てもさまざまな取り組みが行われました。これらを整理してみると、下図に示した通り、大きく3つ(2つ?)のステージに分けることができるのではないでしょか?

最初の第一ステージは「啓蒙・補助」に力を入れる段階です。主な取り組みは2つありました。

セミナー開催

1つは啓蒙を目的とした「介護ロボット活用セミナーの開催」であり、その多くは「講演・セミナー・ディスカッション」と「介護ロボットの展示」で構成されていました。

セミナーの内容、開催回数、時間、登壇者とのディスカッションの有無、展示ロボットの数などに違いこそありましたが、介護ロボットの活用について「知ってもらう」という目的で開催された点はどこも共通していました。

補助金の交付

もう1つは「補助金の交付」です。独自の補助事業をスタートさせた自治体もありましたが、多くは地域医療介護総合確保基金(介護分)を使って実施されました。

当初は1機器につき導入経費の2分1(上限10万円)でしたが、後に上限が30万円に増額されました。

 

以上の通り、第一ステージにおける主な事業は2つありました。片方だけ(特に、補助金の交付)に取り組んだ自治体もありました。

また、セミナーと補助金交付のタイミングを上手くリンクさせてスケジュールを組んだところがある一方、縦割り運営のためにそれぞれが個別に企画・運営されるケースもありました。

一部の自治体では「第一ステージ」を経て、「モデル施設」と(私が勝手に名付けた)第二ステージへ進みました。

ショールームとしての役割

これは介護ロボットの活用現場を見て学んでもらうことを目的に、一度に3~6機種ほどの介護ロボットを特定の施設に導入し、活用してもらう取り組みです。

モデル施設においては、公開見学会を何回か開催するという、いわゆるショールームの役割を担っていた点はどこも共通していました。また、多数の機種を短期間に導入してもらう、という点でも同じでした。

だだし、細かな運営面には相違がありました。施設が補助金を使って多数の機種を導入する点は同じでも、中には導入前後にコンサルティングを受けることが条件となっている場合がありました。

また、販売代理店が指定されていた(そこの指導下で導入・活用する)ケースもありました。

他の施設に波及できるか?

第二ステージにおける事業の大きな特徴としては、対象となるモデル施設の選考に審査があったケースもありましたが、特定の施設にカネ(モノ)やノウハウが集中したという点があげられます。

それでも、それらを他の施設に波及させる仕組みができていれば良いのです。しかし見学会を開催する程度の取り組みだけでは、他の施設への波及はとても難しいのです。

そのため、不平等感を払拭する目的もあり、希望する施設には専門家を派遣し、導入・活用などに関するアドバイスを受けられる取り組みを行った自治体もありました。

第三ステージは未踏

次に、「第三ステージ」では…と伝えたいのですが、まだその領域に達していません。せっかく第二ステージまで到達したのに、その先の事業展開が見えないため、また第一ステージの取り組みに戻ってしまうケースが見られました。

あるいは、ロボットという呼び方を変え、対象をICTやIoTにすり替えて同じ取り組みを繰り返すケースが見られました。

施設向け支援から、ニーズ・シーズマッチングの開催など開発支援にシフトしてしまう動きもありました。

人間だけで行っていた介護業務が変わる

これまでの介護業界では、接遇や介助方法の技法など介護技術の習得に力が入れられてきました。

車椅子や歩行器などの福祉用具を使うことはあっても、それは特定の利用者のためのもの。基本的に人間の力だけで業務が完結していました。

しかし、時代の波に呑まれ、人間だけで行っていた介護現場が大きく変わりつつあります。

介護もトランスフォーメーション時代を迎えます。職員がロボット(含:AIなど)とコラボレーションして業務を遂行していくようになります。

新しいオペレーションを構築していく中でのロボット活用

今後の介護現場では、ロボットやICTなどの活用を前提にした、新しいオペレーション(業務連鎖)を構築していくことになります。

新しいオペレーションを段階的に構築していく過程において、必要なプロセスに適切なロボットを、正しいタイミングにあてがい、活用していくことになるのです。

また、これまでのように、お試し的、あるいは業務プロセスの一部分(局所)だけを見た上でのロボット選びからは、レベルアップしなければなりません。

現状把握(含:要件定義)すら出来ていないにも関わらず、無理にロボットを選んで導入してもらう「ロボットありき」の取り組みからも、脱しなければならないでしょう。

施設に無理にロボットを使ってもらう、という特定機種のプロモーションを代行するような取り組みでは、なかなか普及にはつながらないからです。

では、何が必要でしょうか?

全体計画、そしてそれを段階的に実行していく

それは、これまでに多く見られた「いきなりロボット」のアプローチではありません。

業務プロセス全体における生産性の向上や費用対効果、それに利用者さんのメリットなどを見通した上で、計画的に業務(オペレーション)の改善・変革に取り組んでもらい、その一環としてロボットやICTを積極的に活用することです。

職員の意識改革なども伴うので、いきなり全てを変えるわけにはいきません。段階を踏んでいくことになります。その全体の計画を実行していく過程で、段階的にロボット化・ICT化を進めてもらうのです。

将来的にはAIが介護現場における最適な業務プロセスを構築するようになることは必至です。でも、まだAI活用の初期段階であり、そういう未来の先端技術の活用が介護現場の隅々までに浸透していくには時間が掛かります。

第三ステージで望まれること

なお、先に述べた第二ステージの「モデル施設」の取り組みでは、限られた期間内に複数の機種を導入し、それらを「お披露目すること」が主たる目的でした。

時間の制約もあり、業務(オペレーション)の見直しを行った上でのロボット選びではなく、必ずしも適切なロボットが導入されたわけではありませんでした。「ロボット導入ありき」の取り組みでした。

今後、介護施設には段階的に業務プロセスを改善しながら、その都度、必要なプロセスに適切なロボットをあてがい、活用してもらうことが求められます。

そこで、道のりは長くなりそうですが、ロボットやICTの活用を前提にした新しいオペレーション(業務連鎖)を構築するスキルを施設に習得してもらう!

そういう新しいオペレーション(業務連鎖)を、施設の職員たちが自らの力でつくり上げていく取り組みを支援すること。それが第三ステージでは望まれます。

つまり、「業務(オペレーション)の構築」という、これまで介護業界では行わえていなかった、新しいテーマのスキルアップを支援する必要があるのではないでしょうか?

販売事業者向け

【特別レポート】
介護市場に販売事業者として新規参入したい

【No.42】分厚いレポートと保険給付外の市場の可能性
【No.41】販売事業者は、どのようにセミナーを開催するべきか?
【No.40】製造業のサービス化が進んでいく中、介護ロボットは?
【No.39】縦割りの弊害とカニバリゼーション
【No.38】介護ロボットのセミナーやアンケートの活かし方
【No.37】介護ロボットの普及は「見える化」が解決してくれる
【No.36】介護ロボットの普及・市場開拓のブレイクスルー
【No.35】介護ロボットの買い手の効用を妨げているものは?
【No.34】平成31年度の補助金は早期争奪戦か?
【No.33】介護ロボットはキャズムを越えられるか?
【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
【No.30】成功への第一歩はメニューに載ること?
【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛びつく前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると