特別レポート1:未知なる介護市場への参入:特異な市場を理解する
その4)市場開拓を成功させるには?

その3)まではいかがでしたでしょうか? 

このページ(その4)は、特別レポート「未知なる介護市場への参入:特異な市場を理解する」の最後となります。のまと

最初に、仕組み化の検討に必要な3つのパーツについてお知らせします。ただし、これについて詳しく説明すると、ページ数が増えて冗長になってしまうので、本レポートではポイントだけを簡潔に説明します。詳細については「特別レポート2」をご確認ください。

また、介護市場の開拓を成功させるために、私が必要であると考えている5つのポイントについて説明します。販売を成功させるためのポイント、と言い換えても良いかもしれません。これについても、概要だけ説明しますので、詳細は「特別レポート2」をご確認ください。

1.仕組み化の検討に必要な3つのパーツ

「売り手」である販売事業者が、介護市場の開拓を成功させるためには、顧客へ価値を創造してあげる一方で、利益を出さなければなりません。売れる仕組みを作るためには、大きく分けて3つのパーツを検討する必要があるのです。

1つ目は、「顧客への価値」です。「どんな課題を抱えた顧客に、解決策として何を提供し、他の代替案や選択肢がある中で、どのように表現・訴求していくべきか?」ということです。工業製品については、よく「技術者目線である!」などと指摘されがちですが、ビジネスの創造は、すべて顧客への価値の提案がベースです。だから、まずは「顧客の理解」を十分に行った上で、「顧客への価値」を検討することが必要です。

そして、2つ目は、「利益の設計」です。「誰から、どの製品・サービスで、どのような時間軸で儲けていくのか?」ということになります。事業で顧客へ価値を創造してあげる一方で、利益を出さなければならないということで、「顧客の満足」と「自社の儲け」を両立させなければなりません。「自社の儲け」については、自社の事業をどのような損益構造(モデル)、つまり、儲け方にするかを決めることです。

貴社においては、ご自身の事業についてどのような損益構造になっているのか、理解していますか? 「儲けが出ているから!」と、自社事業の損益構造をよく理解しないまま商品・サービスを提供していたら、とてもマズイですね?  それでは手持ちの資金の減り具合がわからないまま、クレジットカードで買い物を続けるのと同じで、計画性がないということになります。「誰から」「何を」「どうやって」儲けるのでしょうか?

もし、品揃えが豊富であるならば、「どの製品で儲けるか?」「どれが戦略製品なのか?」、あるいは、「どのタイミングで儲けを出すのか?」という視点が重要なのです。

3つ目が「プロセス」となります。「誰と組んで、どのような手順で業務を進めていくのか?」ということです。大切なことは、常に顧客目線で自社事業について考えることです。そこで、顧客が課題を認識して解決し、その状態を維持していく活動を一連のプロセスとして捉えてみることです。また、「顧客の活動チェーン」をよく理解しておくことが重要ですが、本レポートの中ではこれについて説明しません。なぜなら、いろいろと説明を加えると、文章がとても長くなってしまうからです。

2.市場開拓を成功させる5つのポイント

他社よりも1歩、2歩と先行するために、今からすぐにでも取り掛かるべき内容であり、しかも、市場開拓のカギを握るのが「見える化」である、と私は考えています。販売を成功させるためにも「見える化」が重要です。肝心なことが「見える化」されていないと、「現場が新しいツールを上手く活用しきれない」という実態につながります。

私がこのセクションでお伝えする、市場の開拓に求められる5つのポイントの中でも、特に重要であると考えているのが「見える化」です。「見える化」の例については、次図に示した通りです。

例えば、見込み客(顧客)に対して自社製品の導入・活用のメリットを明示して、それを(見込み客に)理解してもらう必要があります。導入を検討する時点から、彼らには、「導入・活用すれば、こういうメリットがある!」ということを十分に理解してもらうのです。

ただし、「腰が楽になります!」や「夜間の見守り回数が減ります!」などと、直接的なメリットをそのまま伝えるだけでは、説得力に欠けます。競合との違いもわかりません。そこで、「既存のやり方」と比較して、「どこに」「どのような」違いが生まれるかを明示してあげるのです。使用事例の「見える化」の一環として、「新しいツールの活用before)」と「活用(after)」の違いをわかりやすく示してあげることが、「見える化」につながります。

また、「新しいツールを活用すれば、経営力のアップにつながる」ということを認識してもらえば、さらなる「見える化」につながります。要は、単にツールとして操作方法や機能面などについて教えてあげるだけではなく、それを経営の視点から戦略的に活かすためのポイントなども提供してあげるのです。

そうすれば、「腰が楽になった!」や「夜間の見守りが減った!」などという直接的な効果だけではなく、副次的に得られるメリットも実感してもらえるようになります。副次的なメリットにはいろいろとあるのですが、例えば、職員の人材育成、業務プロセスの向上、顧客満足度のアップなどがあげられます。これらのメリットについては、目標値や基準値を指標に落とし込んで、「既存の状態」と「理想の姿」の違いを「見える化」させることができます。

ここで一つ注意点がありますが、大学の先生やシンクタンクの仕事のようにアカデミックな方法で説明すると現場の反発を食らうので要注意です。

このような「見える化」が、経営陣から現場の社員・職員に至るまでのモチベーションのアップにつながり、彼ら自身が積極的に新しいツールの活用方法を見い出していくことにもつながります。言い換えれば、操作方法や機能面について教えてあげるだけではなく、経営的な支援を提供して、自発的に新しいツールを使ってもらう環境を整備してあげることが重要なのです。

 

なお、「見える化」以外にも、「わかるカタチ化」「導入・活用の支援」「協力者による波及」「仕組み化(プロセス化)」の5つが、市場開拓を成功させるポイントになると考えています。