幸齢社会をひらく──AIとエイジテックの力で

いきいき長寿社会推進者セキグチ

    Active Aging Evangelist(アクティブ・エイジング・エバンジェリスト)

テクノロジーがひらく長寿社会の未来(No.58)

いきいき長寿社会をどう描くか

~ロンジェビティと欧米の価値観から学ぶ~

2025年 11月18日(火)

【キーワード】

  • ロンジェビティ
  • アクティブエイジング

  • 長寿社会

  • 高齢社会

  • 日経ロンジェビティカンファレンス

去る11月16日(日)、日本経済新聞社が主催する「日経ロンジェビティカンファレンス」に参加しました。私自身、「いきいき長寿社会推進者 セキグチ」という新たな名称(屋号)を掲げて活動する中で、高齢社会をどのように捉え直し、どのように前向きな未来像を描くべきかを再確認する貴重な機会となりました。

このコラムでは、カンファレンスへの参加を通じて得た気づきの中から、「ロンジェビティという概念」「アクティブエイジングとの違い」「日本と欧米における高齢化の捉え方の違い」の3点を中心にお伝えします。

「ロンジェビティ(Longevity)」という言葉を聞いたことがありますか?

残念ながら、日本ではまだ広く浸透していない言葉です。そのせいか、会場には250名という定員に対して、参加者がかなり少ない印象でした。佐々木明子さんというテレビ東京の有名アナウンサーがモデレーターを務めていたにもかかわらず、一般の来場者よりも、主催・協賛・出展企業の関係者の方が目立っていました。

実を言えば私自身も、ロンジェビティという言葉にはあまり馴染みがありませんでした。しかし欧米では、大きな注目を集め始めている概念だそうです。

ところで、私が掲げている「アクティブエイジング」とは何が違うのでしょうか?

違いのポイントについて私が調べた結果を整理すると、ロンジェビティは科学・医療を通じて「健康な長寿」を追求するアプローチであり、身体機能や認知機能の維持にフォーカスする傾向があります。一方、アクティブエイジングは「生きがい」や「社会参加」を重視し、年齢に関係なく活動的かつ自立的に暮らすライフスタイルや社会システムの促進を中心としています。

調べていくと、ロンジェビティは「どれだけ長く生きられるか」という寿命の観点に焦点が置かれている印象も受けました。一方のアクティブエイジングは、より「個人の能動性」に焦点を当て、健康で活動的に齢を重ねることを重視します。高齢者自身が「自分の意思で」「積極的に」活動し続ける姿を指します。

さらに興味深いのは、日本におけるロンジェビティが、美容・ヘルスケア分野、特に高額な自由診療の文脈で最近になって注目され始めたキーワードだという点です。医療や美容、投資分野で徐々に広がり始めた段階であり、かなりビジネス色の強いテーマになっている印象を受けます。インバウンド需要を含め、富裕層向けの高額医療・美容サービスの分野で今後さらに認知が広がっていくのではないでしょうか。

両者は重なり合う部分も多く、どちらも健康寿命やQOL向上を目指しますが、ロンジェビティは「科学的な健康」寄り、アクティブエイジングは「社会的活動」寄りのキーワードということです。

今回のカンファレンスで、私が最も興味深いと感じたのは、登壇者の一人であるジャパンリスキリングイニシアチブ代表・後藤宗明さんが指摘した「気持ちの持ち方の違い」、つまり日本と欧米での高齢化の捉え方の違いでした。

日本では「高齢」「介護」「老後」という言葉には、どうしてもネガティブな影が落ちます。「問題」「負担」「不安」といった連想が先に立ってしまうことが多いように思います。自治体や福祉系の団体もさまざまな取り組みをしていますが、ブランディングに長けていかいせいか、ネガティブな印象をなかなか払拭できていないのが現状です。

一方、欧米の高齢者たちは、より前向きに高齢期を捉えているように感じます。高校生の時にアメリカ人の家庭で寝泊まりし、現地の高校に通った私は、当時からその違いを肌で感じていました。彼らは「高齢期を人生の新たなステージ」として捉え、高齢になることそのものに価値を見出しているように思います。

もちろん文化や制度の違いはありますが、高齢をもっと“前向きに語れる社会”の重要性を改めて実感しました。この視点は、日本においてもこれから必ず必要になるものだと感じています。

ロンジェビリティとアクティブエイジングという2つの概念は、高齢社会を前向きに捉えるためのヒントに満ちています。そして今回のカンファレンス参加を通じて、私は「日本の高齢社会は、もっと明るく語ってよい」と強く思いました。長寿を“負担”ではなく“価値”として再定義し、高齢期をより豊かに生きられる社会をつくるために、技術・制度・コミュニティなど多方面から支える取り組みが欠かせません。

私自身、「いきいき長寿社会推進者 セキグチ」という新たな名称(屋号)で、こうした前向きな価値観を広めながら、テクノロジーや地域資源を活用した実践的な取り組みを発信していきたいと思います。

次回以降のコラムでも、長寿社会の新たな視点や可能性について、さらに深掘りしていく予定です。

 

前のコラム|一覧へ|次のコラム

セキグチについて

「いきいき長寿社会推進者セキグチ」の関口です。

テクノロジーを通じて、高齢者がより豊かに社会とつながる未来を目指し、介護ロボット分野から一歩広げた活動に取り組んでいます。私の経歴やこれまでの取り組みについては、プロフィールページで詳しく紹介しています。

また、活動の背景や大切にしている考え方は、ビジョン・メッセージページにまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。

最新コラム&インサイト

去る11月16日(日)、日本経済新聞社が主催する「日経ロンジェビティカンファレンス」に参加しました。私自身、「いきいき長寿社会推進者 セキグチ」という新たな名称(屋号)を掲げて活動する中で、高齢社会をどのように捉え直し、どのように前向きな未来像を描くべきかを再確認する貴重な機会となりました。

テクノロジーが拓く長寿社会の未来

テクノロジーと社会参加の両面から、長寿社会をより豊かにするための視点をわかりやすくお届けしています。

最新のお知らせ

2025年11月18日(火)

「介護ロボット経営実践会」に代わり、新ブランド「いきいき長寿社会推進者 セキグチ」として新サイトを公開しました。