介護テクノロジーの普及と定着を通じて、高齢社会の課題解決に貢献する

介護ロボット経営実践会

  

介護テクノロジー市場の着眼点(No.68)

なぜ“すごい機器”が売れないのか?

介護テクノロジー市場で市場開拓に苦戦しやすい機器の特徴

2026年 5月22日(金

【キーワード】

  • 介護テクノロジー
  • 介護ロボット
  • 市場開拓
  • 導入支援

介護テクノロジー市場は、今後も拡大が期待される分野です。

高齢化の進行、介護人材不足、そして国によるDX推進を背景に、多くの企業が介護市場への参入を進めています。

しかし実際には、

  • 技術力には自信がある
  • 展示会では注目される
  • 実証では評価される 

にもかかわらず、市場開拓に苦戦する機器は少なくありません。

介護市場では、“高性能”であることと、“売れる”ことは全く別であると、私は考えています。

では、どういう機器が苦戦しやすいのでしょうか。

今回は、2010年から介護現場や介護テクノロジー企業と関わってきた私の経験をもとに、その特徴を整理してみたいと思います。

最も苦戦しやすいのは、

  • 高額である
  • 設置スペースを取る
  • 導入や運用が複雑

という要素が重なった機器です。

 

例えば、

  • 一括購入で100万円を超える
  • 高額で購入したにも関わらず、別途、月々の使用料が万円単位で発生する。
  • 本体が大きく設置場所を選ぶ
  • 面倒な設置工事が必要
  • 操作方法の習得に時間がかかる
 

といったケースです。

もちろん、介護施設側も「良いものなら導入したい」と考えています。

しかし、介護現場は慢性的な人手不足であり、導入そのものに多くの労力を割けないのが現実です。

そのため、

  • 高そうだ
  • 場所を取りそうだ
  • 運用が大変そうだ

という印象を持たれるだけで、検討対象から外れてしまうことも少なくありません。

また、介護施設の予算には限りがあります。

高額な機器を1台導入することで、他の設備投資や職員教育に影響が出る場合もあります。

さらに、介護業界では、

「その機器が何の業務改善につながるのか」が非常に厳しく見られます。つまり、現場が求めているのは高機能ではなく、「苦労に見合う効果があるか」なのです。

介護現場では、「便利になるはずだったのに、逆に手間が増えた」という理由で使われなくなるケースも少なくありません。

例えば、

  • 導入してみたら、誤検知が多くて、アラートが頻繁に鳴る
  • 結局のところ、職員が常に付き添わなければ危険であり、“機器だけで回る”状態にはならない 

などです。

介護現場は非常に忙しく、“小さな負担”でも積み重なると大きなストレスになります。そのため、先に述べた通り、市場では「すごい技術」より、「現場がラクになる」ことの方が重要です。

もちろん、中にはあえて「すごい技術」に手を出す法人も一部にはありますが、それは宣伝や研究など裏の目的があるケースが多いです。

つまるところ、導入が進みやすい機器は、

  • 記録業務を減らせる
  • 巡回や計測などの負担を減らせる
  • 情報共有をラクにできる

など、人手不足への対応が明確です。逆に、“現場負担が増える機器”は定着しにくい傾向があります。

市場開拓に苦戦する機器には、

「結局、誰にとって何が良いのかわからない」「誰に対して、どのような課題を解決してくれるのか、わからない」という特徴があります。

例えば、

  • 利用者にメリットがあるのか
  • 現場職員向けなのか
  • 経営者向けなのか

が曖昧なケースがあります。利用者・現場・経営、それぞれに価値を提供できる機器が理想ですが、実際にはどこか一部にしかメリットがないケースも少なくありません。 

介護業界では、

  • 夜勤負担を減らしたい
  • 記録時間を短縮したい
  • 離職を防ぎたい
  • 加算対応を効率化したい

など、「解決したい課題」が非常に具体的です。

そのため、「AI搭載」 「最新技術」などと強調したところで導入理由になりにくいのです。

むしろ、「夜間の巡回回数が減る」「申し送りがラクになる」など、“現場の変化”が見える・伝わる機器の方が導入されやすい傾向があります。

使っているシーンを見てもらうことによって、明らかにメリットが伝わる機器なら良いのですが、そうではない場合は、信用を得るための証拠(実績)が必要になります。

販売事業者が、「離職防止になる」などと勝手に謳うことは簡単です。しかし、一定の実績がなければなかなか信用は得られないでしょう。

4.“実証止まり”になってしまう機器

また、介護テクノロジー分野では、

「短時間の実証(スポット試用)では評価が高い」という機器は少なくありません。

しかし、その後に広がらないケースも非常に多くあります。なぜなら、“実証”と“本導入”では求められるものが違うからです。

実証段階では、

単に「新しい」「面白い」という理由だけで評価されるかもしれません。

しかし本導入では、

  • 時間の経過と共に飽きられる、
  • 初めは気合で使ってくれたが、やはり面倒だと続かない
  • 販売後の故障対応のコストが非常に高くつく

など、“現実”が問われます。

つまり、「技術として成立する」ことと、「事業として広がる」ことは別なのです。

介護テクノロジー市場は、今後も成長が期待される分野です。

しかし、「介護×AIだから伸びる」という単純な市場ではありません。

今後は、

  • 現場負担を減らせるか
  • 導入しやすいか
  • 毎日使われるか
  • ROIが見えるか

こういうことが厳しく問われるようになるでしょう。

つまり介護市場は、“すごい技術”を競う市場ではなく、“現場で使い続けられる仕組み”を競う市場になりつつあるのです。

そのため今後は、単に機器を販売するだけではなく、現場導入・運用設計・定着支援まで含めて伴走できる企業や支援者の価値が、さらに高まっていくのではないでしょうか。

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