介護テクノロジー市場は、今後も拡大が期待される分野です。
高齢化の進行、介護人材不足、そして国によるDX推進を背景に、多くの企業が介護市場への参入を進めています。
しかし実際には、
にもかかわらず、市場開拓に苦戦する機器は少なくありません。
介護市場では、“高性能”であることと、“売れる”ことは全く別であると、私は考えています。
では、どういう機器が苦戦しやすいのでしょうか。
今回は、2010年から介護現場や介護テクノロジー企業と関わってきた私の経験をもとに、その特徴を整理してみたいと思います。
最も苦戦しやすいのは、
という要素が重なった機器です。
もちろん、介護施設側も「良いものなら導入したい」と考えています。
しかし、介護現場は慢性的な人手不足であり、導入そのものに多くの労力を割けないのが現実です。
そのため、
という印象を持たれるだけで、検討対象から外れてしまうことも少なくありません。
また、介護施設の予算には限りがあります。
高額な機器を1台導入することで、他の設備投資や職員教育に影響が出る場合もあります。
さらに、介護業界では、
「その機器が何の業務改善につながるのか」が非常に厳しく見られます。つまり、現場が求めているのは高機能ではなく、「苦労に見合う効果があるか」なのです。
介護現場では、「便利になるはずだったのに、逆に手間が増えた」という理由で使われなくなるケースも少なくありません。
例えば、
などです。
介護現場は非常に忙しく、“小さな負担”でも積み重なると大きなストレスになります。そのため、先に述べた通り、市場では「すごい技術」より、「現場がラクになる」ことの方が重要です。
もちろん、中にはあえて「すごい技術」に手を出す法人も一部にはありますが、それは宣伝や研究など裏の目的があるケースが多いです。
つまるところ、導入が進みやすい機器は、
など、人手不足への対応が明確です。逆に、“現場負担が増える機器”は定着しにくい傾向があります。
市場開拓に苦戦する機器には、
「結局、誰にとって何が良いのかわからない」「誰に対して、どのような課題を解決してくれるのか、わからない」という特徴があります。
例えば、
が曖昧なケースがあります。利用者・現場・経営、それぞれに価値を提供できる機器が理想ですが、実際にはどこか一部にしかメリットがないケースも少なくありません。
介護業界では、
など、「解決したい課題」が非常に具体的です。
そのため、「AI搭載」 「最新技術」などと強調したところで導入理由になりにくいのです。
むしろ、「夜間の巡回回数が減る」「申し送りがラクになる」など、“現場の変化”が見える・伝わる機器の方が導入されやすい傾向があります。
使っているシーンを見てもらうことによって、明らかにメリットが伝わる機器なら良いのですが、そうではない場合は、信用を得るための証拠(実績)が必要になります。
販売事業者が、「離職防止になる」などと勝手に謳うことは簡単です。しかし、一定の実績がなければなかなか信用は得られないでしょう。
また、介護テクノロジー分野では、
「短時間の実証(スポット試用)では評価が高い」という機器は少なくありません。
しかし、その後に広がらないケースも非常に多くあります。なぜなら、“実証”と“本導入”では求められるものが違うからです。
実証段階では、
単に「新しい」「面白い」という理由だけで評価されるかもしれません。
しかし本導入では、
など、“現実”が問われます。
つまり、「技術として成立する」ことと、「事業として広がる」ことは別なのです。
介護テクノロジー市場は、今後も成長が期待される分野です。
しかし、「介護×AIだから伸びる」という単純な市場ではありません。
今後は、
こういうことが厳しく問われるようになるでしょう。
つまり介護市場は、“すごい技術”を競う市場ではなく、“現場で使い続けられる仕組み”を競う市場になりつつあるのです。
そのため今後は、単に機器を販売するだけではなく、現場導入・運用設計・定着支援まで含めて伴走できる企業や支援者の価値が、さらに高まっていくのではないでしょうか。
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