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いきいき長寿社会推進者セキグチ

    Active Aging Design Partner

テクノロジーが拓く長寿社会の未来(No.66)

なぜコミュニケーションロボットは「飽きられてしまう」のか

~性能ではなく、“役割設計”が寿命を決める~

2026年 2月12日(木)

【キーワード】

  • コミュニケーションロボット
  • 高齢者市場
  • 関係性の設計
  • 感情移入

過去のコラムでもお伝えした通り、PAROやLOVOT、NICOBOといったコミュニケーションロボットは、「癒し」「話し相手」「孤独の解消」といった文脈で広く語られるようになりました。実際、それらは確かに重要な価値です。

しかし、現場で導入が進むにつれて、もう一つの大きな課題が浮かび上がってきています。それは、「最初は盛り上がるが、時間が経つと飽きられてしまう」という問題です。

この現象は、コミュニケーションロボットに限った話ではありません。例えば、施設のレクリエーションでも同じことが起きます。導入直後は盛り上がるのに、時間が経つと定着せず、形骸化してしまう。

私は、介護ロボット導入で多数の施設を見てきましたが、この問題には10年以上も前から気づいていました。

企業側にとって、これは非常に厄介な壁です。大歓迎で導入された。反応も悪くなかった。それなのに、数週間〜数カ月でロボットが棚の上に置かれたままになり、いつの間にか放置されてしまう。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。そして、それを防ぐ方法はあるのでしょうか。

私は、この問題の本質は「ロボットの機能面」というよりも、むしろ 「関係性の設計」にあると考えています。

まず整理しておきたいのは、ここで言う「飽きられる」とは、単に利用者の気分が変わってしまった、という話ではないということです。

むしろ多くの場合、飽きられる現象は、

  • ロボットがいる意味が曖昧になる
  • 関わる理由がなくなる
  • 誰の担当でもなくなる

という形で起きます。

つまり、ロボットが「存在しているだけ」の状態に戻ってしまうのです。人間関係でも同じですが、関係性は“放っておけば続く”ものではありません。

  • 会話が生まれるきっかけ
  • 関わる理由
  • 相手を気にかける動機

こうしたものがあって初めて、関係は維持されます。

コミュニケーションロボットも例外ではありません。飽きるのではなく、関係が途切れてしまう。それが実態に近いのではないかと考えています。

前述の通り、企業側の説明や提案では、コミュニケーションロボットの価値が「癒し」「話し相手」「レクリエーション」などに集約されることが多くあります。もちろん、それらは重要な価値です。導入直後にロボットが歓迎されるのも、多くの場合、この価値があるからです。

しかし問題は、癒しが「入口」にはなっても、それだけでは関係が継続しにくいという点にあります。

癒しは、受け取った瞬間に満たされる一方で、日常の中で

  • 関わる理由
  • 続ける動機
  • 「今日は自分がやろう」という担当意識

が育ちにくいのです。

その結果、導入直後は「可愛い」「面白い」と盛り上がっても、時間が経つにつれて生活の中で優先順位が下がり、ロボットは“なくても困らない存在”へと戻っていきます。

つまり飽きられるのは、癒しが価値として弱いからではありません。癒しを「関係の入口」で終わらせてしまい、そこから先の“役割”へ橋を架けられていないからなのです。

だから企業は、「癒しを届ける」だけでなく、「癒しが役割に変わる設計」をセットで考える必要があります。

では、どうすれば飽きられないようになるのでしょうか。

答えは意外とシンプルです。ロボットが「役割」を生む存在になっているかどうかです。

前回のコラムでは、高齢者がロボットを「世話したくなる」ことに、重要な意味があると書きました。ロボットは、「人を助ける存在」である前に、「助けられる存在」になる。世話することで、高齢者が「与える側」「関わる側」に戻る。

その小さな変化が、尊厳や生活のリズムを回復させる。この視点は、「飽きられる問題」を考える上でもそのまま当てはまります。

飽きられないロボットとは、利用者の生活の中に、

  • 気にかける理由
  • 声をかける動機
  • 役割としての担当
  • ちょっとした責任感

を生み出せるロボットです。

シンプルに言えば、これは「感情移入」が起点になります。感情移入しているから、「気にかける」「声を掛ける」という行為が自然に生まれるのです。単なる機械だと見なされていたら、気にかけることも声を掛けることも起きません。

逆に言えば、これらが設計されていないロボットは、どれだけ高性能でも、遅かれ早かれ飽きられていきます。

企業側は「新しく〇〇機能が追加された」と主張しがちですが、買い手にとって重要なのは、機能そのものよりも、関係が続くかどうかなのです。

ここで、企業側が持つべき重要な前提があります。それは、コミュニケーションロボットは、導入した瞬間に価値が完成する商品ではない、ということです。

言い換えるなら、

  • どう置くか
  • 誰が、どう関わるか
  • どんな場面で使うか
  • どんな会話を生むか

こうした運用がセットになって初めて、価値が立ち上がります。導入は、スタートにすぎないのです。ところが現実には、導入の説明は「機能」「操作」「活用シーン」などの紹介で終わりがちです。

その結果、

  • 操作方法は分かる
  • でも使い続ける理由がない
  • いつの間にか誰も触らない

という状態になります。

これは、現場の努力不足ではありません。現場が悪いのでもありません。企業が、導入直後だけではなく、半年後、1年後まで見据えた「価値の設計」ができていないだけなのです。

コミュニケーションロボットが飽きられてしまう問題は、単なるマーケティング課題ではありません。高齢者市場において、「受け入れられる価値」を設計できるかどうかという、事業の根幹に関わる問題であると考えています。

ロボットの性能を上げることは大切です。しかし、性能だけでは関係は続きません。関係が続くのは、そこに役割が生まれ、生活の中で意味が育つからです。高齢者がロボットを世話したくなる。その感情の中には、飽きられない仕組みをつくるヒントが詰まっています。

コミュニケーションロボットは、癒しを届けるだけの存在ではありません。関係を立ち上げ、役割を生み出し、人がもう一度「自分の出番」を取り戻すための入口になる。

企業が向き合うべきなのは、機能の追加だけではなく、関係の寿命なのです。

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セキグチについて

「いきいき長寿社会推進者セキグチ」の関口です。

テクノロジーを通じて、高齢者がより豊かに社会とつながる未来を目指し、介護ロボット分野から一歩広げた活動に取り組んでいます。私の経歴やこれまでの取り組みについては、プロフィールページで詳しく紹介しています。

また、活動の背景や大切にしている考え方は、ビジョン・メッセージページにまとめています。ぜひあわせてご覧ください。

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