こんにちは、関口です。
介護ロボットやICTの導入を進める施設の方から、今でもこのようなお悩みをよく伺います。
国や自治体の補助金制度も充実し、介護テクノロジーを導入するハードルは以前より大きく下がりました。
しかし、「導入すること」と「現場に定着すること」は全く別の問題です。
補助金を活用して導入した機器が、半年後には誰にも使われなくなり、倉庫や部屋の片隅に置かれたままになってしまう――。こうしたケースは決して珍しくありません。
私は15年以上にわたり、介護テクノロジーの普及や現場への導入支援に携わってきました。その中で強く感じているのは、定着しない施設には、ある共通点があるということです。
多くの施設に共通して見られるのが、現場に「やらされ感」があるまま、いきなりツール(機器)を導入してしまうことです。
私は、介護テクノロジーの導入を成功させるためには、5つの要素が必要だと考えています。
それは、
① 戦略
② プロセス
③ 組織
④ 教育
という4つの土台があり、その上に最後に
⑤ ツール
があるという考え方です。
失敗する施設の多くは、この4つの土台を十分に整えないまま、いきなりツールの導入から始めてしまいます。
例えば、
「理事長に言われたから、とりあえず使ってほしい」
という説明だけでは、職員にとって、「また仕事が増える」「操作を覚えなければならない」と感じるだけになってしまいます。
こうした目的が共有されていなければ、新しいツールは「仕事を増やすもの」と受け止められてしまいます。
介護現場は慢性的な人手不足であり、職員は日々の業務に追われています。そのような状況で、新しい機器だけが突然導入されれば、抵抗や反発が起こるのは当然と言えるでしょう。
テクノロジーを導入した結果、かえって現場の負担が増えてしまうケースもあります。実際には、機器そのものに問題があるのではなく、導入の仕方に原因があることが少なくありません。
例えば、介護記録をデジタル化したものの、一部の職員しか活用せず、紙の記録も残るため二重運用が続いてしまう。
また、見守りセンサーを導入したものの、アラートが頻繁に鳴り、そのたびに職員が駆け付けることになり、以前より忙しくなってしまう。
忙しい介護現場では、一つひとつは小さな負担でも積み重なることで、大きなストレスになります。
その結果、
「新しいセンサーは止めておこう」
「今までのやり方の方が良かった」
という状況になり、せっかく導入した機器が使われなくなってしまいます。
経営層が「便利になるはずだ」と考えていても、実際の業務プロセスに合っていなければ、ツールは現場に定着しません。
介護テクノロジーに限らず、どれほど優れたツールであっても、職員にやる気がなく、業務プロセスそのものを変えようとしなければ、本来の効果を発揮することが難しくなってしまうのです。
では、現場の抵抗を乗り越え、職員が「これは手放せない」と感じるようになるには、どうすればよいのでしょうか。
その鍵となるのが、職員自身が業務改善に主体的に取り組む仕組みをつくることです。
その第一歩が、「業務プロセスの見える化」です。
例えば、おむつ交換の業務一つを取り上げても、
•入室から退室まで、どのような流れになっているのか
•どこで待ち(手持無沙汰の)時間が発生しているのか
•どこで無駄な移動が起きているのか
を現場の職員と一緒に整理していきます。
すると、
「一番負担になっていたのは、この移動だった。」
「この作業ならテクノロジーで改善できそうだ。」
といった気づきが、職員自身の中から生まれてきます。
つまり、
「上から押し付けられたツール」
ではなく、
「自分たちの課題を解決するための手段」
としてテクノロジーを捉えられるようになるのです。
だからこそ、ツールを導入する前に、まず業務プロセスを見直すことが重要だと考えています。
業務プロセスを改善する目的が明確になって初めて、テクノロジーは本来の力を発揮します。
介護テクノロジーは、補助金を活用して導入すれば成功するものではありません。
本当に重要なのは、「毎日使われる仕組み」を現場の中に作ることです。
そのためには、職員に使うことを求めるのではなく、職員自身が業務の課題に気づき、「この機器があれば仕事が楽になる」と実感できる環境をつくる必要があります。
「理事長に言われたから使う」という状態では、介護テクノロジーは定着しません。
「戦略」「プロセス」「組織」「教育」という土台があり、その上で初めて「ツール」が力を発揮します。
この順番を間違えなければ、介護テクノロジーは「導入しただけの機器」ではなく、「現場を変える仕組み」として力を発揮します。
次回は、この5つの要素の中でも最も重要な「戦略」についてご紹介します。
当会では、職員の皆様と一緒に現場の業務プロセスを見える化し、「どこにムダがあるのか」「どこにテクノロジーが役立つのか」を整理する参加型ワークショップを実施しています。
「やらされ感」による導入ではなく、職員自身が改善の必要性に気づき、テクノロジーを前向きに活用できる組織づくりを支援します。
施設向けサービスの詳細や無料資料のご請求は、以下のページをご覧ください。
介護テクノロジー市場への参入、実証、導入・定着、現場調整などについて、まずは状況整理からご相談いただけます。
・市場参入支援
・実証支援・現場調整
・導入・定着支援
・展示会・情報発信
・高齢者市場
・関係性の設計
・感情移入
・補助金
・参入障壁
・ポンプの役割
・補助金の交付
・セミナーや研修会の開催
・モデル施設事業