介護テクノロジーの普及と定着を通じて、高齢社会の課題解決に貢献する

介護ロボット経営実践会

  

介護テクノロジー市場の着眼点(No.70)

「理事長に言われたから使う」では失敗する

~介護テクノロジーが現場に定着しない本当の理由

2026年 7月18日(土

【キーワード】

  • 介護テクノロジー
  • 業務プロセス
  • 業務改善
  • 定着支援

こんにちは、関口です。

介護ロボットやICTの導入を進める施設の方から、今でもこのようなお悩みをよく伺います。

  • 「高い予算をかけて最新のシステムを導入したのに、現場が使ってくれない」
  • 「職員から『逆に手間が増えた』『今までのやり方の方が楽』という声が出ている」

国や自治体の補助金制度も充実し、介護テクノロジーを導入するハードルは以前より大きく下がりました。

しかし、「導入すること」と「現場に定着すること」は全く別の問題です。

補助金を活用して導入した機器が、半年後には誰にも使われなくなり、倉庫や部屋の片隅に置かれたままになってしまう――。こうしたケースは決して珍しくありません。

私は15年以上にわたり、介護テクノロジーの普及や現場への導入支援に携わってきました。その中で強く感じているのは、定着しない施設には、ある共通点があるということです。

多くの施設に共通して見られるのが、現場に「やらされ感」があるまま、いきなりツール(機器)を導入してしまうことです。

私は、介護テクノロジーの導入を成功させるためには、5つの要素が必要だと考えています。

それは、

① 戦略
② プロセス
③ 組織
④ 教育

という4つの土台があり、その上に最後に

⑤ ツール

があるという考え方です。

失敗する施設の多くは、この4つの土台を十分に整えないまま、いきなりツールの導入から始めてしまいます。

例えば、

「理事長に言われたから、とりあえず使ってほしい」

という説明だけでは、職員にとって、「また仕事が増える」「操作を覚えなければならない」と感じるだけになってしまいます。

  • なぜ導入するのか。
  • どんな課題を解決したいのか。
  • 自分たちの仕事がどう変わるのか。

こうした目的が共有されていなければ、新しいツールは「仕事を増やすもの」と受け止められてしまいます。

介護現場は慢性的な人手不足であり、職員は日々の業務に追われています。そのような状況で、新しい機器だけが突然導入されれば、抵抗や反発が起こるのは当然と言えるでしょう。

テクノロジーを導入した結果、かえって現場の負担が増えてしまうケースもあります。実際には、機器そのものに問題があるのではなく、導入の仕方に原因があることが少なくありません。

例えば、介護記録をデジタル化したものの、一部の職員しか活用せず、紙の記録も残るため二重運用が続いてしまう。

また、見守りセンサーを導入したものの、アラートが頻繁に鳴り、そのたびに職員が駆け付けることになり、以前より忙しくなってしまう。

忙しい介護現場では、一つひとつは小さな負担でも積み重なることで、大きなストレスになります。

その結果、

「新しいセンサーは止めておこう」

「今までのやり方の方が良かった」

という状況になり、せっかく導入した機器が使われなくなってしまいます。

経営層が「便利になるはずだ」と考えていても、実際の業務プロセスに合っていなければ、ツールは現場に定着しません。

介護テクノロジーに限らず、どれほど優れたツールであっても、職員にやる気がなく、業務プロセスそのものを変えようとしなければ、本来の効果を発揮することが難しくなってしまうのです。

では、現場の抵抗を乗り越え、職員が「これは手放せない」と感じるようになるには、どうすればよいのでしょうか。

その鍵となるのが、職員自身が業務改善に主体的に取り組む仕組みをつくることです。

その第一歩が、「業務プロセスの見える化」です。

例えば、おむつ交換の業務一つを取り上げても、

•入室から退室まで、どのような流れになっているのか

•どこで待ち(手持無沙汰の)時間が発生しているのか

•どこで無駄な移動が起きているのか

を現場の職員と一緒に整理していきます。

すると、

「一番負担になっていたのは、この移動だった。」

「この作業ならテクノロジーで改善できそうだ。」

といった気づきが、職員自身の中から生まれてきます。

つまり、

「上から押し付けられたツール」

ではなく、

「自分たちの課題を解決するための手段」

としてテクノロジーを捉えられるようになるのです。

だからこそ、ツールを導入する前に、まず業務プロセスを見直すことが重要だと考えています。

業務プロセスを改善する目的が明確になって初めて、テクノロジーは本来の力を発揮します。

介護テクノロジーは、補助金を活用して導入すれば成功するものではありません。

本当に重要なのは、「毎日使われる仕組み」を現場の中に作ることです。

そのためには、職員に使うことを求めるのではなく、職員自身が業務の課題に気づき、「この機器があれば仕事が楽になる」と実感できる環境をつくる必要があります。

「理事長に言われたから使う」という状態では、介護テクノロジーは定着しません。

「戦略」「プロセス」「組織」「教育」という土台があり、その上で初めて「ツール」が力を発揮します。

この順番を間違えなければ、介護テクノロジーは「導入しただけの機器」ではなく、「現場を変える仕組み」として力を発揮します。

次回は、この5つの要素の中でも最も重要な「戦略」についてご紹介します。

「業務プロセス見える化ワークショップ」のご案内

当会では、職員の皆様と一緒に現場の業務プロセスを見える化し、「どこにムダがあるのか」「どこにテクノロジーが役立つのか」を整理する参加型ワークショップを実施しています。

「やらされ感」による導入ではなく、職員自身が改善の必要性に気づき、テクノロジーを前向きに活用できる組織づくりを支援します。

施設向けサービスの詳細や無料資料のご請求は、以下のページをご覧ください。

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2010年より、介護テクノロジー市場の実証・導入・普及支援に関与しています。現場と市場をつなぐ”橋渡し役”として活動しています。

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