2016年 6月 4日(土)

【キーワード】

  • 本当に使ってもらう
  • 実証事業の縛り

介護ロボットの「普及が進んだのか?」と問われると「まだまだ!」という感じです。これについては前回の「介護ロボットの着眼点(コラム)」の中で少しお伝えしました。

 

国や自治体ではさまざまな支援策を用意し、介護ロボットの普及を後押ししてきました。この動きはしばらく続きそうです。特に、在宅ではなく施設に対する導入支援を積極的に進めてきました。

そのような政策のお陰もあり、介護ロボットの認知度は大きく高まり、「ロボットを導入したことがある!」という施設が増えてきました。今後、ちょっと時間が掛かるかもしれませんが、必ずロボットは普及していくはずです。

 

では、なぜ、「普及はまだまだ!」なのでしょうか?
それは、本当に使ってもらうことが意外と難しいからです。

 

施設に介護ロボットを導入してもらうことは意外と簡単です。金銭面の障害を取り除いてあげれば導入してもらうだけであれば決して難しいことではありません。

しかし、導入から半年、1年、2年後に「使い続けていますか?」と問うと、ノーとなってしまうケースが少なくないようです。つまり、導入は簡単でも“本当に”活用してもらうことが意外と大変なのです。


国や自治体の支援策では、よくデータを収集する目的で〇〇実証事業と称してロボットが施設に導入されます。そのような実証事業の期間中は、さまざまな人達からのサポートの下でロボットが使用されるので、素晴らしい(都合の良い?)データが集まるかもしれません。

しかし、一旦、そのような実証事業の縛りから施設が解放されると使われなくなってしまいがちです。つまり、実証事業のような特別な環境下では使われていても、日常業務の中では使われなくなってしまいがちです。

結局、既存のオペレーション業務に変化(負担)があると、「〇〇事業に参画している!」という大義名分がある間は良くても、それから解放されると使われなくなってしまうのです。

 

話は少し脱線しますが、例えば、都内まで電車通勤しているサラリーマンを対象に「歩いて健康になる事業!」を実施すると仮定しましょう。そして、事業の参加者には、期間中であれば通勤の徒歩時間も勤務中とみなされるとしましょう。

そのようなケースでは、自宅の最寄駅からさらに1-2駅離れた場所まで毎朝歩いていくことに特に抵抗がないかもしれません。そして、事業の報告会では、「参加者の10人中8名が1ヵ月で1キロ以上も痩せました!」といった成果が発表されるでしょう。ところが、そのような事業が終わってしまえば、毎朝、分単位、いや秒単位で時間を気にしながら慌ただしく都内まで電車通勤しているサラリーマンが「最寄駅を通過してさらに1-2駅も歩き続けるか?」となると恐らく継続できないでしょう。

 

ロボットの実証事業もこれと似ているのです。だから、データを集めて「素晴らしい成果が出ました!」とやる事業は大いに結構ですが、それだけでは結局、後に使われなくなってしまいがち。

そのためには、しっかりとロボットを活用する目的意識を施設内の上から下までの職員に浸透させると同時に、既存のオペレーション業務に変化(負担)を感じさせない仕掛けが必要となるのです。

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