介護ロボットの着眼点(No.6)

自治体支援策の実態は?…

2016年 7月 16日(土)

【キーワード】

  • 縦割り
  • 横串の役割

国や自治体の補助金制度は、介護ロボットを売る側のロボットメーカーはもちろん、買う側の介護施設にとっても非常にありがたいものです。なぜなら、自社の懐を痛めなくても済むからです。

補助金や助成金の活用により、本来自ら背負わなければならないはずの経済的な負担(開発費や購入費を無駄にするかもしれないこと)に対してリスクヘッジすることができます。

 

介護ロボットは、ヨソの業界と比べると、今のところお上(国や自治体)の介入度(依存度)が高いビジネスです。市場そのものがお上の補助金に大きく依存した形で成り立っています。そのようなビジネスにおいては、お上の政策が将来の市場動向に大きな影響を与えがちです。

 

ところで、国や自治体の取り組みって意外とわかりにくいかもしれません。

その理由は、政策上のある目的に対し、縦割り組織の中で複数の「課」が絡み、しかも1つの「課」が複数の事業を実施して(案件を扱って)おり、事業別に予算が付いているからです。しかも、事業別に異なる委託事業者が絡んでいます。

 

一般的な国や自治体の組織編制に関しては、まず局があり、その下に部があり、部の中に「課」があります。例えば「保健福祉局」「 福祉部」 「高齢福祉課」という具合です。

課が1つの大きなまとまり(組織体)となって動いています。そして「課」単位で事業が管理されて、1つの「課」が複数の事業を実施しています。

しかし、複数年度に渡り実施される事業内容は、殆ど同であるにも関わらず、年度毎に名称が異なることもあり、外部の者にとってはややこしいのです。

 

例えば、「介護ロボットの普及」という政策上の大きな目的があります。この目的達成には「高齢者や福祉を担当する部門(課)」と「産業の育成や振興を担当する部門(課)」が絡んでいるケースが目立ちます。

そして、「高齢福祉課」だけでもABCなどと複数の事業を抱えていることも。そして、Aは「あ」という事業者に委託され予算は●●万円、Bは「い」という事業者が受託し予算●●円、Cは「う」という事業者で予算〇〇円・・・という具合です。

 

同じ組織の中でも部門間には壁がありがちですが、その先の実行部隊である委託事業者間については、お互いに壁というよりも接点さえないケースが殆どです。

このように政策が縦割り的に行われている一方で、横串的な機能があまり働いていないケースが少なくないのです。点々バラバラで有機的には機能していないようです。

 

地元観光業の支援などの機能については行政区域による運営で構わないでしょうが、介護ロボットの普及のような取り組みは果たして縦割りで良いのでしょうか?

このような実態を踏まえると、結局のところ、自らが横串の役割を担うごとく情報を上手に整理して動いていくより他ないようです。

【No.47】介護分野の労働危機を社会の転換点へと変える解決策
【No.46】介護予防事業の問題点と克服への道筋
【No.45】補助金が、自主性や積極的な改革の意識をダメにする?
【No.44】介護ロボの普及:国や自治体の補助金政策は何が問題なのか?
【No.43】コロナ禍で介護ロボットの普及は阻まれるのか?
【No.42】分厚いレポートと保険給付外の市場の可能性
【No.41】販売事業者は、どのようにセミナーを開催するべきか?
【No.40】製造業のサービス化が進んでいく中、介護ロボットは?
【No.39】縦割りの弊害とカニバリゼーション
【No.38】介護ロボットのセミナーやアンケートの活かし方
【No.37】介護ロボットの普及は「見える化」が解決してくれる
【No.36】介護ロボットの普及・市場開拓のブレイクスルー
【No.35】介護ロボットの買い手の効用を妨げているものは?
【No.34】平成31年度の補助金は早期争奪戦か?
【No.33】介護ロボットはキャズムを越えられるか?
【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
【No.30】成功への第一歩はメニューに載ること?
【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛びつく前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると