【コラム】介護ロボットの着眼点

補助金のメリットとデメリットは?

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2016年7月18日(月)

介護ロボットコラム007:補助金のメリットとデメリットは?

前回のコラムにも書いた通り、自治体や国の補助金制度は、非常にありがたいものです。なぜなら、補助金や助成金の活用により、本来なら自ら背負うはずの経済的な負担(開発費や購入費の負担)が大きく軽減され、自分の懐を痛めずに済むから。

でも、このようなメリットがある一方でデメリットも顕在化してくるようです。

 

一旦話は逸れますが、例えばテレビ番組の特集である飲食店が取り上げられると一見客がどっと押し寄せて来て売上が一気にアップするはずです。しかし、そこからリピーターになる客は意外と少なく、価格に見合う料理やサービスが提供されない限り、お客は一回ぽっきりの一見さんのまま消えていきます。しかも、一見さんがリピートしないだけではなく、「予約がなかなか取れなくなってしまった!」、「混雑していて落ち着いて食事ができなくなった」などの理由から、大事な常連客が離れていきがちです。これと同じような現象は、店側がグルーポンのような共同購入型クーポンを採用する際にも起こるようです。私が聞いて確認した限り、ほぼすべての店主が同じようなことを言っていました。つまり、一時的な売上増にはなるものの、混雑などによりこれまでの常連客が離れていく原因にもなりかねないのです。このような事態の発生を食い止め、継続的な売上増を狙うためには、あらかじめ「次の展開」を周到に準備しておく必要があるのです。

 

話は戻り、介護ロボット等導入支援特別事業のような10/10も補助してくれるオイシイ制度があると、仮にある施設が「〇〇という介護ロボットを導入しよう!」等と検討していても、「また来年も(同じ制度が)あるのでは?」と期待するかもしれません。あるいは、「全額補助に比べたら、最大で10万円の半額補助の制度では物足りないな!」という感覚に陥るでしょう。補助金によりタダで入手できることに慣れてしまうのです。結局、次回の全額補助の制度の有無が明確になるまで購入を控えてしまう事態が十分に想定されます。

 

ところで、職場のプリンターがすべて壊れてしまったら、印刷などができなくなり業務が滞る原因になります。また、真夏にも関わらずエアコンが壊れていたら室内にいる人は暑くてもう大変な騒ぎになります。だから、一刻も早く、修理するか新規購入するはずです。このような緊急性がある製品の購入とは異なり、介護ロボットについは何も今すぐに購入しなくても業務に支障をきたすことはないはずです。一般的に、介護ロボットの購入には殆ど緊急性がありません。だから、「少し待てばタダで手に入る!」と次回の補助の機会を待ってしまうでしょう。

 

ただでさえ介護報酬に収入を依存し、国や自治体から(施設の)建設時から事業開始後の研修制度を含め、様々な支援を提供してもらえる介護業界は、ヨソの業界と比べると、自らのポケットマネーで何か投資をしようとする動きが鈍くなりがち。もともとこういう体質の中、「タダで購入できる!」というオイシイ汁を一度吸ってしまうと、今後、補助金を当てにした場合にしか施設が購入へ向かわなくなってしまいかねません。

 

政府や自治体には、補助金を出すことにより少しでも需要を喚起させようという狙いがあるはずです。とりあえず、狙い通りになるはずです。しかし、先に書いたメディアに取り上げた飲食店や共同購入型クーポンを導入する店舗のごとく、「次なる展開」をあらかじめ周到に用意しておかない限り、「税金のバラマキだ!」と一部から批判される一方、一時的な売上をつくるだけで市場創造にはあまり貢献しないかもしれません。つまり、補助金目当てに人が群がり、そういう人達がゼロサムゲームのごとく一時的に補助金というパイの奪い合いをするだけで、介護ロボット普及のスピード化にはつながらないかもしれないのです。

 

恐らく、単に購入を補助してあげるだけではなく、もっと別の使い道があるでしょう。これは、子供に対して単にお金を渡すことは止めて、「お金の教育」とセットでお金を渡してあげた方が、結果として有効にお金が使わるのと同じことかもしれません。だから、単にロボットを10/10の補助で与えるのではなく、冷やかし購入を防ぐため、多少なりとも負担してもらうと同時に「教育」をセットにした支援策の方が結局、施設にもメーカーにも良い結果を導くのではないでしょうか?

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