【コラム】介護ロボットの着眼点

ロボット市場への参入

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2017年 3月31日(金)

介護ロボットコラム017: ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?

ここ12年、ロボット分野で独立しようとする人を目にします。中には「ロボット=市場が非常に大きくなる」程度の認識で、市場や競合のことをよく理解せぬまま、学生のサークル活動のような感覚で未経験の分野に興味を示したのでは?と思いたくなる人も。

 

事業は椅子取りゲームと同じです。10席をわずか4人で取り合っている間は、1人で2席・3席と取ることが十分に可能です。ところが10席が20席と倍に増えても、取り合う人(つまり競合)が4人から30人に増えたら、1席を取ることさえ大変になります。

また、20席のうち15席が大手に占有され、残りの5席を複数の弱小事業者で取り合うこともあり得ます。逆に、席数はわずか5しかなくても、そこに2人しかいなければ、席の確保は容易なのです。

 

つまり、顧客や市場はもちろんですが、「競合」の動向をよく見据えながら自らの事業機会を見極めることが欠かせないのです。ロボット市場は期待感がとても大きいため、まだ数が少ない椅子にゴールドラッシュのごとく人が群がりかねません。

ところで、今後の介護ロボット普及を見込んで、代理店業に新規参入し、独立しようとする人もいます。話を聞いてみると国や自治体から出てくるロボット購入の補助金を当て込んだ参入です。

 

でも、未経験の方の代理店業には特に注意が必要ではないでしょうか?

一見すると当たり前のことですが、事業として成功するためには、新規のお客さま(新規顧客)を獲得することは勿論のこと、新規にて獲得した客をリピート客へと育て上げなければなりません。これができないと常に高コストな新規顧客を探しまわるだけという苦戦を強いられます。

 

どの業種にも共通しますが、新規顧客1人を獲得するために掛かるコストは、既存顧客にリピート購入してもらうコストの何倍にもなります。これは、2倍、3倍どころか、もっと高くなるのが一般的です。5倍以上になるはずです。

 

ちなみに、私が10年以上も前に自ら顧客ゼロの状態から手掛けた健康食品事業の場合、顧客単価が5,000円に対して2万円以上も新規獲得コストが掛かっていました。つまり、5,000円の売上を作るために、(広告や販促費だけで)2万円以上のコストが掛かっていたのです。

当然ながら、これだと売れば売るほど赤字が膨れ上がります。ところが、素晴らしい点があったのです。それは新規顧客の獲得コストはとんでもなく高いにも関わらず、リピート購入してくれる顧客の獲得コストがわずかにすぎなかったことです。

もっと正確に言うと、100人の新規客がいると58名くらいが2回目の購入に至ったのですが、3回目以降の購入については顧客の脱落率が非常に低かったのです。「3回買ってくれると顧客が定着する」という状態だったのでした。

 

リピート客を獲得するためのコストは、新規顧客の獲得コストの1/10以下だったのです。新規獲得で発生した大きな赤字をリピート購入で、時間の経過と共に回収していくモデルでした。

 

介護ロボットも同じように、新規顧客の獲得コストは高くても、リピート購入(この場合は追加購入)に掛かるコストは、それの半分以下になるはずです。一方、機種や施策によってバラツキがありますが、新規顧客の獲得コストはリピート顧客獲得の倍以上になるはずです。

 

だから、高コストの新規顧客の獲得業務を代理店業として引き受ける一方で、儲けの源泉となるリピート購入の業務を委託元が担うとしたら、委託元の儲けのために自ら高コストな業務だけを背負うことになります。

それでも既に介護施設へのネットワークがある事業者であれば、あくまで「ついでに」という感覚でロボットを扱う選択もあるでしょう。

 

とにかく、「介護ロボット販売代理業は吉か凶か?」については、どこから、どのように、どのタイミングで収益を出すのかをあらかじめ設計できなければ、何もわからぬまま博打のようになってしまうのです。

 

介護ロボット市場開拓のマーケテイング

【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛び付く前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると