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介護ロボット経営実践会

  

介護テクノロジー市場の着眼点(No.72)

「見守り」という言葉に潜む大きな落とし穴

~同じ「見守り」でも、現場が求めるものは違う~

2026年 10月20日(火)

【キーワード】

  • 見守り機器
  • 介護テクノロジー
  • 障害者支援施設
  • 新規市場開拓

こんにちは、関口です。

2010年から介護ロボットの普及に携わってきた私は、これまで数多くの見守り機器の登場を見てきました。「見守り」は、介護テクノロジーの重点分野の中でも早くから製品開発が進み、導入が比較的進んできた分野の一つです。 

しかし、多くの施設に導入され、全国に普及した機種もあれば、残念ながら市場から姿を消してしまった見守り機器も少なくありません。

見守り機器には、ベッド上の動きを検知するセンサー、転倒や離床を知らせる機器、睡眠状態を把握するシステム、さらには脈拍などの生体情報を測定するウェアラブル型まで、さまざまな種類があります。一人暮らしの高齢者が電気ポットを使うと、離れて暮らす家族に通知が届く仕組みも、一種の見守りです。

このように、「見守り」と呼ばれる技術やサービスは、利用する場所や目的によって実にさまざまです。

特に高齢者施設では、こうした技術の進歩によって、以前は職員が訪室して確認していた利用者の状態を、離れた場所から把握できるようになりました。複数の利用者の状態を同時に確認できる仕組みも普及しています。

しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。

そもそも「見守り」とは、何をすることなのでしょうか。

最近、介護施設以外の障害者支援施設や病院を訪問し、現場の方々からお話を伺う機会がありました。その中で改めて感じたのは、同じ「見守り」という言葉を使っていても、現場によってその意味や求められる役割が異なるということです。

これまで私自身が関わってきたのは、主に高齢者施設でした。そこでは当たり前だった「見守り」の考え方が、必ずしも障害者支援施設や病院といった他の分野にも当てはまるわけではないことに改めて気づかされました。

例えば、「マーケティング」という言葉があります。ある人は営業活動とほぼ同じ意味で使います。別の人はテレビCMなどの広告宣伝を思い浮かべます。また、市場調査や商品開発まで含めて考える人もいます。

このように、同じ言葉を使っていても、人によってその意味や捉え方は大きく異なるものです。

今回、障害者支援施設や病院でお話を伺った際にも、似たような感覚を覚えました。同じ「見守り」という言葉を使っていても、そこで想定されているものが、私が関わってきた高齢者施設の見守りとは必ずしも同じではなかったのです。

例えば、特養などの高齢者施設における見守りでは、転倒やベッドからの離床を検知すること、夜間の睡眠状態を把握することなどが重要になります。高齢者介護施設では、利用者ごとに違いはありますが、夜間の安全確認に共通する場面が多くあるため、ベッド周辺を中心とした見守り機器が普及してきました。

一方、他の障害者支援施設や病院などでは、利用者や患者の特性、施設の役割、職員の業務などによって、見守りに求められるものが異なります。つまり、施設の役割や利用者・患者の状態による違いが大きいのです。

また、同じ病院であっても、病棟の役割や患者の状態によって、見守りに求められるものが異なる場合があります。

このように今回、いくつかの現場でお話を伺う中で、これまで私が高齢者施設で見聞きしてきたこととは異なる考え方や事情に触れる機会がありました。

詳細についてはここでは触れませんが、改めて感じたのは、「見守り」という共通の言葉が使われていても、その背景にある課題や求められる機能が同じとは限らないということです。

多くの開発企業は、自社が持つ技術を活かして、新たな製品やサービスを生み出そうとします。

しかし、技術的に実現できることと、現場が必要としていることは、必ずしも一致しません。

以前、ある介護現場のスタッフから、機器によって新たなバイタルデータが得られるようになっても、「そのデータを知らされたところで、どう対応すればよいのかわからない」といった趣旨の話を聞いたことがあります。

本来なら把握する必要のなかった情報まで通知されることで、かえって判断や対応に迷い、職員の心理的な負担が大きくなる場合もあるのです。

売り手は「あれも、これもできる」と製品の多機能性をアピールしがちです。しかし、買い手が求めているのは、必ずしも多くの機能ではありません。

大切なのは、技術によって何ができるかだけでなく、それが現場にとってどのような価値を持つのかということです。

「見守り機器」と一口にいっても、利用する施設や対象者によって、求められる役割は異なります。

そのため、高齢者介護の分野で実績のある製品だからといって、障害福祉や医療などの分野でも同じように受け入れられるとは限りません。 

これは、見守り機器に限った話ではないでしょう。

新しい市場への参入を検討する際、多くの企業は既存の製品や技術をどこに展開できるかという視点で考えがちです。

しかし、同じような製品が使われている市場であっても、実際の利用場面や現場の事情が異なれば、求められる価値が変わってきます。ある分野で競争優位性が高かったとしても、別の分野でも同じ優位性が保たれるわけではないのです。

今回、障害者支援施設や病院への訪問を通じて、長年関わってきた「見守り」という分野について、改めて考える機会を得ました。

見守り技術は今後も進歩し、新たな可能性が広がっていくでしょう。しかし、技術が進歩したからといって、そのまま新たな市場が生まれるわけではありません。

大切なのは、「見守り」という言葉だけで市場を一括りにせず、その先にある現場の違いに目を向けることです。

同じ「見守り」という言葉の裏側には、それぞれ異なる課題やニーズが存在しています。

その違いを理解することが、新たな市場を切り拓くための第一歩になるのではないでしょうか。

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プロフィール

2010年から介護テクノロジー分野に携わり、企業・行政・介護施設など、さまざまな立場の関係者と実証・導入・普及に関わってきました。現在は、その経験を活かし、企業の市場参入から事業化までを支援しています。

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・講演
・自治体
・メディア
・実証支援
など