【コラム】介護ロボットの着眼点

ロボット市場への参入

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2017年 7月 8日(土)

介護ロボットコラム021: ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画

介護ロボットのイベントを企画・開催する度に痛感することがあります。それは、ロボット分野の中でも「介護ロボット」にフォーカスし、一見するとテーマが絞られていても、イベント参加者のニーズが人によってマチマチであるということです。

「作り手」と「使い手」、つまり「企業の人」と「施設の人」の間の温度差がとても大きいことは前々から理解していました。そういう温度差の大きな人たちを一同に集める限り、片や大満足でも片や不満になることはよくあります。

 

また、「企業の人」の間でも、「自社が得意とする要素技術を何かに活かせないか?」などという意識で参加する人と、販路開拓や名刺集めが目的で来る人との間ではニーズがかなり異なります。名刺集めが目的だと、登壇する講師の話などにはハナから興味がない人もいます。

 

同様に、「施設の人」のニーズもマチマチです。なんとなくロボットに関する情報収集に来た人であれば、イベントで見るモノ(ロボット)・聞くコト(話)は全て新鮮に感じるでしょう。

でも、そうではなく特定の機種だけに興味があるという人も少なくありません。

そういう人は、特定の機種はお気に入りなのに、「見守りロボット、あれは身体拘束だ!」「コミュニケーションロボット、あんなのと会話させるとは、まやかしだ!」などと否定的な先入観を持っている人もいます。機種に対する好き・嫌いなどがあるのです。

ところで、一旦話が変わりますが、マーケティングに長けた民間会社では、集客活動の一環としてイベントを開催します。イベント開催の目的はあくまで次なる商品・サービスの販売へ繋げるためです。

そのため、より多くの参加者に満足してもらおうなどという発想はなく、「どれだけ効率的に次に誘導できたか?」つまり「費用対効果」という指標を重要視します。

イベント開催(投資)によって次なる商品・サービスにどれだけ効率的に誘導させることができたか? 

これが全てです。そのため、企画の段階からターゲットを明確にし、費用・講師・一緒に組む(コラボする)相手・会場・配布資料に至るまで実に巧みに設計する会社があります。

 

一般的に、多くの人は「(料金を)安くすれば、より人が集まる」と単純に考えるようです。

確かに単なる「人数集め」が目的であればそれは正しいのですが、「(料金が)安い=ショボい」と見られることにもなります。

そのため、特定層にターゲットを絞り1日に13万円どころか10万円以上の高額セミナーを売るような会社では、狙うべき客層を絞り込み、高い参加料を設定します。

 

低額でセミナー開催することは、人数集めができても自社(あるいは講師)のブランドイメージを崩すことにもなりかねないから避けるのです。このような行いは、高い料金をチャージする経営コンサルタントなどにも見られます。

彼らは商工会議所のような場で講師を務めることを好みません。理由は自身のステータス(地位)を下げることになると考えるからです。「(料金の)安い人=大したことない人」と思われたら、コモディティ化した(どれも同じような)商品や激安店の人と同じように見られてしまいますから。

だから「100名の中に1人でも30万円を払ってくれる人がいるのであれば、わざわざ料金を1万円に下げて15人を集めるような行為」はしないのです。

 

 

話は戻りますが、先に紹介したような民間企業と異なり、行政のイベントの多くはテーマがあっても大衆向けです。しかも「無料」であるため、なんとなく軽い気持ちで参加する人も少なくないようです。

そういうこともあり、当日の参加者のニーズはバラツキがちです。参加人数が多ければ多いほど「不満」な人も出てきます。

 

「タダで参加させてもらっているのだから、何か一つでも学ぶことがあれば、それで十分に満足するべきでは?」というのが私の考えですが…。

お金を1円すら出していなくても、ニーズがバラつくイベントでは、参加人数が多ければ多いほど「不満」な人も増えるはずです。

さらに最近、改めて認識させられたのは「在宅で介護に関わる人」と「施設の職員」の意識の違いです。

「在宅で介護に関わる人」はどうしても自身の家庭内における介護が比較の基準であり、家族という特定個人に対する強い想いから物事を判断しがちです。

一方、施設の職員は「組織」の中で仕事をしているので、職員同士のコミュニケーション不足や人間関係に悩まされ、限られた時間内で多様な業務を処理しなければなりません。また、生産性や業務の見直しなどに対する問題意識もあります。

 

そのため、同じように「介護業務」に携わっているにも関わらず、使う環境や条件が異なることもあり、「介護ロボット」という同じモノを見ても、見える景色が異なるのです。

 

このようにイベント参加者のニーズが人によってマチマチである場合のアンケート調査では、「そもそも参加の目的は何だったのか?」を確認した上で、満足度を問わないと「満足」「不満足」のチェックを入れてもらったところ、本当のところがわからないままです。

例えば、登壇する講師の話がどんなに素晴らしくても、参加者の目的と合致していなければ、講演に対する評価は「✗(バツ)」になってしまいます。このような場合、イベントの企画(ターゲットの設定)や告知内容が上手くできていなかっただけにも関わらず、「あの講師はダメだ」と片付けられてしまいがちです。

 

また潜在顧客から「これは自分に向けたモノではない」と思われたらアウトです。やはり企画の段階からマーケティングで使うSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を意識するのが理想でしょう。しかし大衆向けの行政のイベントでは、そういう発想がないケースが多いようです。

 

単なる人数集めや開催することが目的のイベントなら仕方ないですが、本来なら、どういう人に、どういう目的で参加してもらうべきかを企画の段階から明確にするべきでしょう。

「介護ロボット」という同じ言葉を使っていても、置かれている状況が異なれば、見える景色は人によってマチマチなのですから。

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