介護ロボットの着眼点(No.53)

介護分野への挑戦: 中小企業が切り拓く新たな可能性

~現場視点で考えるアプリ開発と顧客開拓の成功戦略~

2024年 12月26日(木)

【キーワード】

  • 介護施設
  • 業務効率化
  • スマホアプリ開発
  • 顧客開拓
  • 現場ニーズ

2024年も残り数日となりました。新しい年を迎えるにあたり、多くの中小企業が新たな市場への挑戦を計画していることでしょう。特に、介護施設の負担軽減や業務効率化を支援するスマホアプリやツールを開発する企業が増えていますが、新規参入にはどのような準備が必要なのでしょうか?

このコラムでは、介護分野への参入を目指す企業が押さえるべきポイントを、AIを活用した調査結果と私自身の見解を交えながらお伝えします。

まず、AIを活用して「中小企業が介護施設向けアプリを開発し、介護市場に参入する際に注意すべき点」を調査してみました。以下がその要点となります。

1.現場ニーズの深掘り

  • 介護現場の具体的な課題やニーズを正確に把握する。
  • 現場スタッフとの対話やフィールドワークを通じて、実際の業務フローや困難点を理解し、それに対応する機能をアプリに反映させる。

2.ユーザビリティの確保

  • 介護スタッフのITリテラシーは多様であるため、誰でも直感的に操作できるユーザーインターフェースを設計する。
  • 複雑な操作や専門的な知識を必要としないシンプルなデザイン。

3.セキュリティとプライバシーの保護

  • 利用者の個人情報や機密データを取り扱うための情報セキュリティ対策
  • データの暗号化やアクセス制限、定期的なセキュリティチェックを実施し、法令遵守と信頼性を確保する。

4.既存システムとの連携

  • 既に他の業務管理システムや関連製品が導入されている場合があるので、新たなアプリがこれらと連携できるか、またはデータの互換性があるかを確認する。

5.法令・規制の遵守

  • アプリの機能や提供するサービスがこれらの法令に適合しているかを確認し、必要に応じて行政機関や専門家の助言を得る。

6.導入後のサポート体制

  • アプリ導入時の研修やサポート体制を整備し、施設スタッフがスムーズに利用開始できるよう支援する。
  • 導入後のサポートや定期的なアップデート情報を提供することで、長期的な信頼関係を築く。
 

次に、AIを用いて「顧客開拓において特に重要な点」を調べた結果、以下の通り回答を得ましたので紹介します。

1.ターゲットの明確化

  • 自社の製品やサービスが最も効果を発揮する介護施設の種類や規模を特定し、リソースを集中させて効率的な営業活動を行う。

2.現場ニーズの深掘り

  • 現場スタッフや管理者との対話を通じて課題やニーズを詳細に把握し、それを解決する製品価値を強調する。

3.デジタルマーケティングの活用

  • ウェブサイトやSNS、メールマーケティングを通じて自社製品の強みを訴求し、競合との差別化を図る。また、具体的な導入事例や効果を紹介するコンテンツを発信する。

4.ネットワーキングの強化

  • 業界イベントやセミナーへの参加を通じて、介護施設関係者や他業界の専門家とのつながりを深める。これにより、信頼を築きつつ新たなビジネスチャンスを創出する。

5.成功事例の共有と口コミ促進

  • 既存の導入施設での成功事例をまとめ、これを新規顧客に提示することで信頼性を向上させる。また、満足度の高いユーザーからの口コミや紹介を活用し、新規顧客獲得につなげる。

6.導入後のフォローアップ体制

  • 顧客に対して継続的なサポートを提供し、信頼を維持する。例えば、定期的なアップデート情報の提供や、問題解決をサポートする窓口の設置などが効果的。

AIの提案は非常に包括的で、特に「現場ニーズの深掘り」や「既存システムとの連携」といったポイントは、介護分野への新規参入において不可欠な視点です。

しかし、それだけでは不十分な場合もあり、現場の状況に応じた戦略的なアプローチが求められます。ここでは、私自身が重要だと考える2つの視点を付け加えたいと思います。

1. 認知の獲得がスタート地点

どんなに優れた製品やサービスでも、ターゲット層に認知されなければ成果を上げることはできません。AIの提案には「デジタルマーケティングの活用」が挙げられていましたが、介護業界についてはこの方法がベストだとは思いません。

AIは「現場ニーズの深掘り」とも指摘していますが、顧客視点に立って、施設の職員が問題を認識した際に、それを組織内でどう共有し、その問題解決に向けて、どこから、どのようにアクションを起こし、最終的に「購入」という判断を下すのか?

こういったプロセスをよく確認する必要があるのです。その上で、「認知の獲得」をどう達成すべきかよく検討することです。

例えば、業界イベントでの実演やデモンストレーションを行う、または施設訪問による直接的な説明を重ねることで、製品のメリットを直感的に理解してもらえる機会を提供することができます。また、初期段階で導入してくれる「アンバサダー的な施設」を見つけ、成功事例として共有してもらうことで、口コミを通じた認知拡大を図る方法もあります。

2. 提案のタイミングが鍵を握る

もう一つ重要なのは「タイミング」です。介護施設では、一度システムやツールを導入すると、簡単に別の製品に切り替えることは難しいのが現実です。

そのため、製品の提案タイミングを見極めることが、成功の大きな鍵となります。「早すぎる」場合は、1~2年待てばチャンスがあるかもしれませんが、「遅すぎる」場合は残念ながら手遅れなのです。

施設が現行システムの更新時期に合わせて提案を行うことが理想的です。また、施設職員が新しい操作方法を覚える余裕がある時期を選ぶことも、採用されやすくなる要因の一つです。

このように、導入側の事情やスケジュールを把握し、最適なタイミングを狙ったアプローチを行うことが求められます。

その他、いろいろ気になる方は、こちらのレポート『介護ロボット・ICT市場開拓の秘訣:なぜ上手くいかないのか? 成功するための戦略とマーケティング』を参考にしてみてください。

このレポートでは、特に新規参入企業が直面しやすい課題とその克服方法について詳しく解説しています。

前のコラム|一覧へ|次のコラム

【No.53】介護分野への挑戦:中小企業が切り拓く新たな可能性
【No.52】ホワイトカラーの消滅と介護人材が社会の主役となる未来
【No.51】日本社会の課題と介護産業の改革
【No.50】公務員の常識を覆すDX戦略の現場から【No.49】地方創生マネーの実態と課題
【No.48】地方自治体のデジタル変革:市民サービスの改善への道 

【No.47】介護分野の労働危機を社会の転換点へと変える解決策
【No.46】介護予防事業の問題点と克服への道筋
【No.45】補助金が、自主性や積極的な改革の意識をダメにする?
【No.44】介護ロボの普及:国や自治体の補助金政策は何が問題なのか?
【No.43】コロナ禍で介護ロボットの普及は阻まれるのか?
【No.42】分厚いレポートと保険給付外の市場の可能性
【No.41】販売事業者は、どのようにセミナーを開催するべきか?
【No.40】製造業のサービス化が進んでいく中、介護ロボットは?
【No.39】縦割りの弊害とカニバリゼーション
【No.38】介護ロボットのセミナーやアンケートの活かし方
【No.37】介護ロボットの普及は「見える化」が解決してくれる
【No.36】介護ロボットの普及・市場開拓のブレイクスルー
【No.35】介護ロボットの買い手の効用を妨げているものは?
【No.34】平成31年度の補助金は早期争奪戦か?
【No.33】介護ロボットはキャズムを越えられるか?
【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
【No.30】成功への第一歩はメニューに載ること?
【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛びつく前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると