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いきいき長寿社会推進者セキグチ

    Active Aging Evangelist(アクティブ・エイジング・エバンジェリスト)

テクノロジーが拓く長寿社会の未来(No.59)

ロンジェビティは日本でどう広がるのか

~ウェルビーイングの軌跡と重ねながら考える~

2025年 11月26日(水)

【キーワード】

  • ロンジェビティ
  • ウェルビーイング

  • 長寿社会

  • 高齢社会の未来

去る11月16日の「日経ロンジェビティ・カンファレンス」への参加は、私自身にとって「超高齢社会をどう再定義するか」を深く考えるきっかけになりました。ただ、ロンジェビティという言葉自体は、まだ一般的な用語とは言い難く、その意味や使われ方も多様です。

そこで今回のコラムでは、日本におけるロンジェビティの現在地を整理し、さらに過去に注目された関連概念と照らし合わせながら、ロンジェビティが今後どのように浸透していくのかを少し考えてみたいと思います。

「ロンジェビティ(Longevity)」という言葉は、直訳すると「長寿」です。ただし、その語源をたどると意味がより立体的に理解できます。

Longevityは、long(長い)+ “‐gevity”(生きる期間) で構成されています。

“‐gevity” のルーツはラテン語の aevum(生涯・時代)であり、ここから「人生の長さ」を示す語が形成されたようです。ちなみに、“gevity” という独立した英語は存在しません。

また少し調べてみると、コンサルティング会社のアクセンチュアが Gevity という企業を2021年に買収 していたことがわかります。Gevityはヘルスケア産業のクライアントに対し、革新的なテクノロジーを用いた事業変革を支援する会社で、こうした動きからも“Longevityの思想が産業領域に広がり始めている”兆しを感じることができます。

このように語源と企業動向をあわせて見ると、近年の longevity は単なる「長生き」ではなく、“人生の時間をどう豊かに使うか”という概念へ進化していることが理解できます。

ロンジェビティは近年、「寿命の延伸」だけでなく「長く活躍できる社会」「健康と社会参加の両立」といった幅広い意味で使用されています。とはいえ、日本では一般メディアで頻繁に使われる言葉ではなく、研究者、医療・ヘルスケア企業など、限定された領域で先行的に広がっている印象です。

実際にGoogleで「ロンジェビティ」と検索するとアンチエイジング系の製品が多く表示され、Amazonではサプリが目立ちます。今の段階では“美容・健康”に寄った消費者向けの概念が中心と言えます。

一方で、高齢者向けサービス、フィットネス、食品、ロボティクス、住まい、金融など、さまざまな産業で「長寿化を前提とした価値づくり」は避けられないテーマになっています。その文脈でロンジェビティという言葉が徐々に使われ始めており、今後は“高齢社会の新しい市場概念”として浸透していく可能性があります。

ロンジェビティの今後を見通す上で、似た概念の歩みを振り返ることは有益です。代表格はウェルビーイング(Well-being)でしょう。

ウェルビーイングはここ数年で急速に広まりました。背景には、働き方改革や人材不足があり、企業が「社員の健康や幸福」を経営のテーマとして扱う必要が高まったことがあるかと思います。社会課題と個人の幸福が重なっていたため、多くの人にとって“自分ごと化”しやすい概念でした。

一方で、ウェルビーイングは定義が広すぎ、結局何を変えれば良いのかが曖昧になりやすい側面があるのではないでしょうか。そのため現在では、以前ほどの“バズワード”感は弱まりつつあり、企業内では「健康経営」や「エンゲージメント向上」といった、より実務的な言葉に置き換えられてきていると考えています。

ロンジェビティは今後どうなるか?

ロンジェビティはウェルビーイングのように流行語として一気に広がるタイプではなく、人口構造の変化という根本的な社会背景が後押しする概念だと考えています。日本では「人生100年時代」と言われるようになり、企業、自治体、個人のあらゆる領域で再設計が求められています。

そのためロンジェビティは「気がついたら社会全体に入り込んでいた」という、静かな浸透をする可能性が高いと感じています。

言葉が先行するのではなく、取り組みが先に存在し、後から名前がついてくるタイプの概念だと言えるのではないでしょうか。

まずは美容・アンチエイジングや自由診療などの領域では一足先に広がるはずですが、それは全体の中の一部にすぎません。

おわりに

いまは「ロンジェビティ」という言葉が社会に根付く前夜の段階にあります。しかし、超高齢社会における価値づくりや新しい市場創造を考える上で、この概念が果たす役割は今後ますます大きくなるはずです。

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セキグチについて

「いきいき長寿社会推進者セキグチ」の関口です。

テクノロジーを通じて、高齢者がより豊かに社会とつながる未来を目指し、介護ロボット分野から一歩広げた活動に取り組んでいます。私の経歴やこれまでの取り組みについては、プロフィールページで詳しく紹介しています。

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