つい先週、東京ビッグサイトで開催された国際ロボット展(iREX2025)に足を運びました。
2010年に神奈川県の介護介護ロボット普及・推進事業に関わって以来、これまで何度もロボット展に触れ、講演側として参加する機会もありましたが、今年の会場では明らかに、これまでとは異なる空気が流れていると感じました。
それはロボットが“生活の外側にいる存在”から、“日常の中に静かに入りこんでくる存在”に変わってきたということ。
製造現場からサービス業へ、そして一般家庭へと近づく気配を、確かに感じた時間でした。
会場で目を引いたのは、乗用車を軽々と持ち上げてしまうファナックの巨大な産業機械だけではありません。人と肩を並べて働く協働ロボット(Cobot)が、想像していた以上に数多く展示されていました。
この分野において、かつてはユニバーサルロボットが象徴的な存在でしたが、今は多数のメーカーが市場に参入してきたようです。
前回のコラムで触れたパロが“場の空気をやわらげた”ように、協働ロボットたちは現場の空気を整える存在になりつつあるのかもしれません。人の動きを邪魔せず、自然な距離で作業を支えるため、現場の緊張感がやわらぐのです。
今回、私が最も驚いた変化は、人型ロボット(Humanoid)が、展示ブースで“当たり前のように”立っていたことでした。
中国勢の AGIBOT / Unitree / Galbot は特に印象的で、技術の推進力において、あっという間に日本を追い越してしまった——そんな現実を目の当たりにする時間でした。
人型ロボットの存在は、決して派手ではなく、せかせか動くわけでも、必要以上に強くアピールするでもありません。ただ人と同じ目線で、そこに立っている。
思わず足を止めて、その佇まいをじっと眺めてしまう。そんな柔らかな驚きがありました。
もうひとつ、印象に残ったものがあります。GMO AIRによるロボット派遣サービスです(詳細:https://ai-robotics.gmo/lp/robot-haken)。
ロボットは“買うもの”から、必要なときだけ役割を担ってもらう“スキマバイトのような存在”として使えるようになったのです。
イベントの案内役、商業施設での来場者対応、時には展示会を和ませる存在として活躍しているようです。
おそらく、まだ「客寄せパンダ」のような活用が多く、手探りなのでしょうが、“無理に生活へ押し込まず、まずは一緒に過ごしてみる”という柔らかい距離感が生まれ始めていると思いました。
今回の展示で、私の足がふいに止まった場所がありました。
川崎重工の「CORLEO(コルレオ)」です(詳細:https://www.khi.co.jp/expo2025/concept01/index.html)
“乗馬感覚で外遊びを楽しむロボット”という説明を受けましたが、その日は動く姿こそ見られず、ただ静かに展示されているだけでした。
でも、それだけで十分でした。一人で眺めていた私の頭の中に、アメリカのグランドキャニオンやセドナのような大自然の中を散歩するように、ロボットと外気を共有する情景がすぐに浮かびました。
介護でも医療でも産業でもなく、人生の楽しみを増やすためのロボット。
パロが“癒しの入口”を開いてくれた存在だとするなら、CORLEOは“楽しみの入口”をそっと示してくれる存在なのかもしれません。
会場を歩きながら、ふとパロの姿が思い浮かびました。パロは、利用者の心をやさしくほどき、会話を生み、人と人の距離を自然と縮めてくれました。
今回出会った協働ロボ、人型ロボ、そしてCORLEOにも、その原点の延長を見た気がします。
彼らは“何ができるか”以上に、“そこにいることで何が生まれるのか”を問いかけてくる存在でした。
ロボットは、機能を補う存在から、人と時間を共有する存在へと静かに育っているのだと思います。
長寿社会は、ただ長く生きるだけではなく、“どう関わり、どう笑い、どう楽しむか”を問う時代です。
ロボットは、その問いに寄り添う形で進化しています。癒しを届け、働く場を整え、会話を生み、人生の楽しみをそっと増やす。
便利さや効率の先にある「暮らしの温度」に寄り添うテクノロジー。
国際ロボット展で過ごした時間は、そんな未来がすでに静かに始まっていることを私に確かに感じさせてくれました。
「いきいき長寿社会推進者セキグチ」の関口です。
テクノロジーを通じて、高齢者がより豊かに社会とつながる未来を目指し、介護ロボット分野から一歩広げた活動に取り組んでいます。私の経歴やこれまでの取り組みについては、プロフィールページで詳しく紹介しています。
また、活動の背景や大切にしている考え方は、ビジョン・メッセージページにまとめています。ぜひあわせてご覧ください。
つい先週、東京ビッグサイトで開催された国際ロボット展(iREX2025)に足を運びました。
2010年に神奈川県の介護介護ロボット普及・推進事業に関わって以来、これまで何度もロボット展に触れ、講演側として参加する機会もありましたが、今年の会場では明らかに、これまでとは異なる空気が…テクノロジーと社会参加の両面から、長寿社会をより豊かにするための視点をわかりやすくお届けしています。
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