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いきいき長寿社会推進者セキグチ

    Active Aging Evangelist(アクティブ・エイジング・エバンジェリスト)

テクノロジーが拓く長寿社会の未来(No.64)

ロンジェビティ時代のコミュニケーションロボット

~人と人、人と社会をつなぎ直す存在へ~

2026年 1月7日(水)

【キーワード】

  • ロンジェビティ
  • コミュニケーションロボット
  • 高齢者の孤立
  • 役割の再設計

これまでのコラムでも紹介してきた「ロンジェビティ」という言葉があります。

ロンジェビティという言葉が示すのは、単に寿命が延びる社会ではありません。

それは、人生の後半が長くなることを前提に、「どのような時間を過ごし、誰と関わり続けるのか」が問われる社会です。

医療や介護の進歩によって身体的な寿命は延びました。一人暮らしの高齢者数も増え続けています。そんな中、孤立や役割喪失といった課題は、これまで以上に顕在化していきます。こうした状況の中で、近年注目を集めているのがコミュニケーションロボットです。

将来的には、人型ロボットが高齢者の身の回りの支援を行ってくれるようになるはずです。訪問介護の生活支援業務の肩代わりになるでしょう。しかし、コミュニケーションロボットは、現段階においても重要な役割を担っています。

本コラムでは、ロンジェビティ時代という文脈から、コミュニケーションロボットの意味と役割を捉え直していきます。

これまでのロボットは、産業用を中心に生産性向上や人手不足解消のための存在として活躍してきました。工場での産業用ロボット、介護現場での移乗支援ロボットなど、「人の負担を減らす」ことが主な役割でした。

この文脈では、ロボットは人の代替であり、効率を高めるための装置ということになります。評価軸も明確で、速さ、正確さ、コスト削減といった数値で測ることができます。

しかし、こうした文脈だけでは、コミュニケーションロボットの価値は捉えきれません。話しかけたり、反応したり、一緒に時間を過ごす存在である以上、他のロボットのように単純に効率面だけで価値を測ることができないのです。

PAROやLOVOT、NICOBOといったコミュニケーションロボットが提供しているのは、作業の代替ではありません。それは、人が誰かと過ごす「時間」そのものです。

特に高齢期においては、日常会話や何気ないやり取りが減少しがちです。

その結果、生活のリズムが崩れ、社会との接点も減っていきがちです。

この「空白の時間」に入り込んでくれるのがコミュニケーションロボットです。それは作業の代替ではなく、誰とも共有されなくなった時間を“関係のある時間”に変える試みでもあります。会話の相手であると同時に、生活のリズムをつくり、感情の揺らぎに反応する存在になるのです。

重要なのは、ロボットが人の代わりになるということではありません。ロボットを介して、人が自分の感情や存在を確認できる点にあります。

PARO
LOVOT
NICOBO

ロンジェビティ時代の課題は、健康寿命の延伸だけではありません。「自分は誰かにとって必要な存在なのか」という問いが、より長い期間続くことです。

コミュニケーションロボットは、直接的に役割を与える存在ではありません。何かを代わりにやってくれるわけでもありません。しかし、人が話しかけ、世話をし、反応を受け取ることで、「関わる側」であり続けるきっかけを提供してくれます。

これは、高齢者にとって受身で支援される存在から、関与するという能動的な存在への転換になります。ロボットを使って高齢者を一方的に守る・支える対象として捉えるのではなく、役割を感じられる関係へと変わっていきます。別の言い方をすれば、関係の中に位置づけてもらえるようになるとも言えるでしょう。

コミュニケーションロボットの価値は、スイッチをオンにした、つまり導入しただけでは生まれません。どの場面で、誰が、どのように関わるのかという設計思想が不可欠となります。

家庭、施設、地域。それぞれで求められる役割は異なります。一般的なロボットと同様に効率化の発想で導入すれば、違和感や拒否感が生まれることになりかねません。

ロンジェビティ時代のロボット導入では、「何ができるか」ではなく、「どんな関係を生みたいか」が出発点になります。この視点を欠いたままでは、ロボットは、使われ続ける理由を持たない「置物」のような存在になってしまうでしょう。

コミュニケーションロボットは、生産性向上のための機械ではありません。そのため、一般的なロボットと異なり、費用対効果を数値で客観的に測定することが容易ではありません。

ロンジェビティ時代におけるコミュニケーションロボットは、人と人、人と社会をつなぎ直す媒介としての可能性を持っています。

重要なのは、技術そのものではなく、それをどう位置づけ、どう使うかです。技術そのものよりも、活用方法の工夫が求められるのです。

ロボットと共に生きる社会は、関係性を再設計する社会でもあります。

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「いきいき長寿社会推進者セキグチ」の関口です。

テクノロジーを通じて、高齢者がより豊かに社会とつながる未来を目指し、介護ロボット分野から一歩広げた活動に取り組んでいます。私の経歴やこれまでの取り組みについては、プロフィールページで詳しく紹介しています。

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