こんにちは。介護ロボット経営実践会を主宰している関口史郎です。この度はホームページのご訪問、ありがとうございます。

介護ロボット経営実践会を立ち上げるに至るまでの考えや経緯、そして私のプロフィールを紹介します。

この想いが、2000年頃から「超高齢社会に向けて、介護を含めた健康関連分野で新しい市場を創る仕事をしたい!」と思い続けてきた私が、介護ロボット経営実践会を立ち上げたきっかけです。

私は神奈川県の公益社団法人かながわ福祉サービス振興会に籍を置き、2010年から国や他の自治体に先駆けて介護ロボットの普及推進事業を担当しました。

当時からロボット開発者は大勢いましたが、介護ロボットの市場は未知の世界でした。モノづくりをする人や政策に関わる人は大勢いたのに、一番肝心な市場(マーケット)を理解している人はほとんどいませんでした。

そこで私は、神奈川県事業をきっかけに、人に頼ることなく自分の足で何度も施設に出向き、自分の目で現場の実態を把握する見聞情報の収集に努めました。

かながわ福祉サービス振興会の在籍中だけでも、計20機種以上のロボット、計100以上の事業所の(試験)導入に関わりました。それ以外にも、主に神奈川県内ですが、優に数百ヵ所以上の介護施設や病院を訪問し、経営トップから現場の職員に至るまで多数の方を取材する機会に恵まれました。

汗だくになる真夏の日もコートを着込んでも寒い冬の日も関係なく、ほとんど毎日のように大小さまざまな施設へ出向き、検証事業や普及活動に数多く携わり、介護ロボット全般にわたる情報を蓄積してきました。また、テレビ・雑誌・新聞といったメディアからの取材依頼や各種団体からの講演依頼にも数多く対応しました。

さらに、製造業をはじめ、商社、システム会社、不動産会社、シンクタンク、リサーチ会社、コンサル会社、銀行など、優に100を超える国内外の企業や団体から介護ロボット市場への参入などに関する相談にも対応しました。そして、自身で見聞きしながら把握した市場や業界に関する情報の提供を行いました。

このように介護ロボット業界に関わる多くの人と接し、メーカー、施設、行政の間に立ち橋渡し役として数多くの介護ロボット導入現場を見てきました。「売り手」と「買い手」の間に挟まれ、トラブルにも何度か巻き込まれましたが、介護ロボット市場の開拓に関してさまざまなことが理解できました。

2012年頃から、国やいくつかの自治体が「ロボットの開発事業者」に「早く良いモノを作ってください!」と補助金を出して盛んに応援してきました。一方、「使う側」の介護施設に対する経済的な負担軽減の支援も次から次へと出てきました。

国や自治体の支援策により、介護ロボットはメディアでの露出が増え、大きく注目されました。一定の成果はありましたが、実際には介護ロボットの普及スピードは国の目論見に反して、かなり遅いのです。

介護ロボットがなかなか普及しない理由は、価格が高いという価格面や、完成度がまだイマイチという使い勝手・機能面以外にも、さまざまな課題があるからです。

介護現場は、一般的に知られたロボットが活躍する工場や物流倉庫と異なり、必ずしも生産性や効率性が求められる職場ではありません。サービス業でありホスピタリティが求められる職場です。産業用ロボットが活躍する世界とは明らかに使われる環境が異なるのです。

さまざまな課題があるのですが、介護ロボット普及に時間が掛かっているのは、突き詰めると「ギャップがあるから」と、私は以前からずっと考えていました。

では、どんなギャップがあり、なぜそれが生じるのでしょうか?

価格面や機能面のギャップ以外にも、多くのロボットメーカーは「ロボット」というモノを直販あるいは代理店などを通じて販売する「モノの売り切り」のビジネスモデルで事業を展開しています。一方の受け入れ施設は、ロボットというモノを与えられ、その操作方法を教わる程度では「上手く活用し切れない」という「売り手」と「買い手」のギャップがあります。

また、マインド面のギャップもあります。ロボット市場への期待が大きく、国、自治体、民間企業などが注目していますが、ユーザーである介護職員の視点に立つと、ロボットの活用は課題解決や目標達成の手段にすぎないわけです。

介護ロボット関連のセミナーや講演で講師を務めた際、「せっかくロボットのセミナーに来たのに、介護施設に導入した結果、どこまで人員削減が進んだのかという事例の紹介がなく、残念だった!」という意見をいただいたことがありました。「ロボット」という表現が使われているために、このように産業用と同じ感覚で意見する人がいたということをお伝えしたいのですが、これも明らかにマインド面のギャップと言えるでしょう。

このようにさまざまなギャップがある中、それをなかなか埋められなかった要因については、一言で説明すると、ロボット産業創出の期待が大きいために、最も肝心な「市場(customer)の理解」が置き去りのまま、「モノづくり(技術)」や「政策(ロボット関連政策のPRや実績づくり)」が優先されたからではないかと考えていました。

ビジネスは全て顧客への価値提案がベースになっています。だから、本来は「顧客の実態」を明らかにした上で解決策を提案すべきだったのではないでしょうか?

もう一つの原因は、市場特性が全く異なるにも関わらず、「ロボット」という括りで一緒くたに検討・議論されたことです。これが介護現場とのギャップを埋めにくくした根源だと考えていますが、今後は少しでも改善されることを望んでいます。

説明した通り、さまざまなギャップがあるのですが、介護ロボットの普及に向けて、国や自治体が支援に乗り出しました。例えば、金銭面の支援・実証実験の場の提供・開発サイドと供給サイドのマッチンングなどが該当します。

どこも試行錯誤していますが、このような支援はしばらく続くと思われます。

かし、国や自治体、それにロボットメーカーの力では行き届かないギャップが「作り手」と「使い手」との間にはあります。それを埋めることも数あるギャップの中で普及促進へ向けた大きなカギになると考えています。国や自治体の支援だけでは解決できない「ギャップ」を埋めることを、誰かが担う必要があると考えていたのです。

この想いを実現するために、私自身にできることは何か? 国や自治体などの力では行き届かないことで、私にどんなギャップを埋めることができるのだろうか? これについてよく考えました。

私は、2010年以降、さまざまな介護ロボットの導入事例を見てきました。同時に、介護現場へのヒアリングを通じて、導入現場の実態把握に努めてきました。多数の介護施設を訪問しながら、どうすれば介護現場・経営の課題が解決するのだろうか? 介護ロボットの普及を加速するには何が必要なのだろうか? などと日夜、真剣に考えてきました。

「一体、何が必要なのだろうか?」

「どうすれば介護ロボットの普及がスピードアップするのだろうか?」

「カネ(購入費用)や(ロボットの)機能面の問題だけなのだろうか?」

と自問自答してきました。国や自治体の担当者が数年単位で交代していく中、変な責任を感じて何度も試行錯誤しながら悩みました。まさにカオスの状態でした。その状態が2年以上も続きました。そして、カオスから抜け出してようやく「このやり方をきちんと実施すれば上手くいくのでは?」というアプローチにたどり着いたのです。

介護ロボットという未開拓市場の創造に向けて、また自立したプロフェッショナルとしてそれを実践していきたい! この想い介護ロボット経営実践会の立ち上げにつながりました。

私は、アメリカの大学を卒業した後、オリンパス光学工業(現オリンパス)勤務を経て再びアメリカに留学し、経営学修士(MBA)を取得しました。アメリカの大学院在学中は、一旦休学してボストン郊外にある大手医療機器メーカーの本社で日本市場向けのマーケティング業務に従事しました。

その後、帰国して大手外資系企業や中小企業などで、業務プロセス改善、ロジスティック、新規事業の立ち上げなどさまざまなプロジェクトを経験しました。

社会人になり最初の10年間のキャリアは、「クオリティ(品質改善)」「プロジェクトマネジメント」というキーワードに括ることができます。

アメリカの大学院でMBAを取得した直後は、大手外資系企業でシックスシグマという品質改善(経営改革)の手法を使って課題解決を請け負う社内コンサルタント(ブラックベルト)の立場でプロジェクトを推進しました。また、中小企業で経験した「売上ゼロ」「顧客ゼロ」の状態からの新規事業(健康食品事業)立ち上げと、責任者としての事業運営の経験は、失敗続きながらもアメリカのMBAで学んだマーケティングよりも遥かに実践的で得るものがありました。

そのような経験を活かし、介護ロボットと接点を持つ前は、健康食品や化粧品など通販事業のマーケティング戦略を支援していた時期がありました。TV・チラシ・雑誌などの媒体を駆使し、お客さん、著名人、医師など影響力のある人を巧みに広告塔として使いながら、稼ぎ出した売上の多くを広告宣伝に再投資していく事業です。

「必ずしもたいしたことないモノ」でも「すごい!」「買いたい!」「超 お得!」などと消費者に思わせるために、ちょっと巧みなマーケティング手法(演出)を駆使するわけです。

やっていることは広告媒体への投資とリターンのカネ(数字)をシミュレートしながら、さまざまな手法を駆使して消費者の欲望や不安を煽ることでしたが、まるで社会に貢献している感じがなかったのです。潤うのは、販売業者、広告業界、それに彼らの協力者(広告塔を演じる大学教授や芸能人など)だけ。時間の経過と共にそのような業界を支援する仕事に違和感を持ち始めました。

そのような業界とは異なり、かながわ福祉サービス振興会でスタートさせた介護ロボットの仕事はまさに社会課題の解決でした。

健康食品や化粧品の通販業界は、実物を手にしてもらうことなく、短時間で消費者に商品について理解させて、「欲しい!」と思わせる宣伝がとても上手です。その一方で、技術やモノづくり先行になりがちでマーケティング面が非常に弱く、顧客とのギャップを埋められないのが、新規に市場に参入した多くのロボット関連の企業だと思います。

そのような介護ロボット市場に参入している、あるいは参入を検討している企業を対象に、戦略やマーケティングを支援しながら市場を開拓するお手伝いを通じてロボット普及に貢献したいと考えています。

また、介護現場の仕事に関しては、遅かれ早かれAIが最適な業務を設計してくれる時代がやって来るはずです。そうなれば、「次は何をすべきか?」「それはどうやるべきか?」などと職員が迷うことがなくなり、業務効率が大きく向上します。しかし、今は「人の手でやるべきか? ツールを使うべきか?」「(ロボットを含め)どのツールを使うべきか?」などと検討した上で、業務を組み立てなければなりません。つまり、自らの力で日々の業務(オペレーション)を構築することになるのです。

そこで、介護ロボット等を上手に活用しながら新しいオペレーションを構築し、目標の達成を目指す介護施設に対して、他業界で学んだ業務プロセス改善などの手法を駆使しながら支援し、ロボットの普及に貢献したいと考えています。

「売り手」と「買い手」の双方の課題解決でギャップを埋めるお手伝いを通じて、何かとマイナスなイメージを持たれる介護現場や介護業務をわくわくするものに変えて、明るい超高齢社会づくりに貢献したいと考えています。

「わくわく介護と明るい超高齢社会」を目指して努力を続けていきますので、どうぞこれからも変わらぬご支援のほどお願い致します。

 

介護ロボット経営実践会

関口 史郎