【コラム】介護ロボットの着眼点

介護ロボット市場の開拓には?

高齢化の進展に伴う社会課題の解決、それに新産業の育成という面でも注目される介護ロボット。

このコラムでは「介護ロボットの着眼点」と称し、私、関口が2010年にスタートさせ、現在も取り組んでいる介護ロボットの普及推進にまつわる話をお伝えします。

過去の取り組みをはじめ、現在、未来と時間軸をずらし、あるいは、メーカー、介護施設などと立場を変えながらお伝えする介護ロボット普及推進のコラムです

 

2016年8月24日(水)

介護ロボットコラム009:介護ロボット市場の開拓には?

ロボットに限った話ではないのですが、介護業界(施設)向けにモノやサービスを提供するビジネスには苦労が伴いがちです。「絶対にないと困る!」ようなモノは別ですが・・・。もう少し正確に表現すると、自社の製品やサービスが、介護保険制度などの一環として国あるいは自治体から用意された支援の枠組みの中に組み込まれていない限り、介護市場のビジネス展開には苦労が伴うのです。

???ですか?

 

具体的には次のようなことをお伝えしようとしているのです。

例えば、とあるロボットをある業界に上市させようとして、130万円で販売すると仮定しましょう。その業界では30万円の値付けで買い手が現れても、同じロボットを介護市場へ持っていくと30万円どころか半値の15万円に下げても「高い!」と指摘されるはずです。

 

同じ製品・サービスを提供しているのに、介護市場ではヨソよりも価格を大きく下げないと商売にならないはずです。つまり、顧客単価が大きく下がることを意味します。おまけに、1顧客当たりの獲得コストが(ヨソの業界よりも)高くなりがちです。

このような状況だと、メーカーにとって、ロボットビジネスの展開に関し、介護市場の開拓(施設への拡販)には苦戦を強いられます。

 

なぜこうなってしまうのでしょうか?

それは、施設の運営が介護保険制度の枠組みの中で行われており、収入の殆どを介護報酬に依存していることに起因するでしょう。おまけに、規制業界であることもあり、介護には一般的なヨソの業界よりも国や地元自治体からの支援や補助の類が充実しています。つまり、介護保険制度の枠組みの中で提供されていて、直接あるいは間接的に公費の恩恵を受けるモノやサービスに関しては、〇〇研修などを含め、何かと安く提供されています。自治体の支援や補助が充実している点において、介護業界はとても恵まれているといえます

 

しかし、物事には表と裏がある通り、このことは公費の恩恵を受けることなくモノやサービスを施設に提供する事業者にとっては、先に書いたような苦労を伴うことになります。介護施設側の支払い意欲がヨソ(民間企業など)とは異なるからです。自腹だけでモノやサービスの購入をする動きが、(ヨソに比べると)どうしても鈍くなりがちだからです。その結果、同じ製品・サービスを提供しているのに、施設へ提供しようとすると(ヨソの業界よりも)「顧客単価が低いにも関わらず、顧客獲得コストが高い!」という現実に直面するのです。

 

これでは、損益に注意を払い事業展開している企業が、介護市場への進出をしなくなってしまいます。そうなってしまうと介護ロボット市場への参入組が大きく減ってしまいます。

 

こういう事態を避けるためにも、国や自治体の支援策や介護ロボットの介護保険給付の対象検討などは非常に重要な役割を担っているのです。また、別の側面から検討してみると、介護市場への参入はメーカーにとって都合の良い点も多いのです。なぜなら、良し悪しは別にして、何かしらの補助が獲得しやすく、しかも国や自治体の支援策を上手く活用すれば、大なり小なりあちこちからもらうことが可能だからです。

 

ただ、行政がこれまでのように単にメーカーや施設に金銭面の補助を提供するだけでは、無駄も目立つようになるでしょう。目標や計画が曖昧で、活用する体制すら築かれていないまま、なんとなくロボットが導入されても上手く使われないからです。そこで、私は介護ロボットの普及促進に向けて、まずはユーザーとなる施設に対し上手くロボットを介護経営に活かせるように育成してあげる支援が必須であると考えています。

 

国や自治体はもちろんですが、各メーカーにとっても、ベストプラクティスのごとく(自社の)介護ロボットを上手く活用してくれる模範施設の育成が必要なはず。とはいうものの、これは行政向きの仕事でしょう。なぜなら、メーカーが担当するとどうしても自社製品のPR要員を育成するようになってしまうからです。

 

とにかく、「まずは、優等生を育成し、そこから他施設へ波及させる!」。単発の補助ありきではなく、普及に向けてまずは戦略シナリオを明確にした上で、支援策を検討すべきではないでしょうか?

介護サービス事業者向け「PDCA ✕ 業務標準化」実践セミナー

3点について学ぶ介護事業者向けセミナー
・PDCAのまわし方
・業務の標準化
・目標設定

介護ロボット市場開拓のマーケテイング

【No.33】介護ロボットはキャズムを越えられるか?
【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
【No.30】成功への第一歩はメニューに載ること?
【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛び付く前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると