2017年 1月 30日(月)
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前回の「介護ロボットは増えたが、その一方で…」と題したコラムでは、介護ロボットの調査について、直近と2010年に実施した双方の結果を比較した上で、見守りやコミュニケーションのロボットの機種が多く増えたことをお伝えしました。
さて、本日のテーマは見守りロボットです。今月、とあるイベントで見守りロボットを導入した施設の責任者による事例発表を聴講しました。その人が「見守りロボットの導入を検討する際に感じた」と説明された内容は、前々から私が介護施設の導入状況を見て、痛感したことと殆ど同じでした。
それらは、「実感できない」「他との違いがわからない」「他の既存システムとの併用ができるのかわからない」「金額の意味(相場)がわからない」でした。
早速、1つ1つ少し詳しく説明しましょう。
「実感できない」とは、展示会などの場でロボットのデモをしてもらっても、それを導入することにより、具体的に何がどのよう変化し、どのように効果として現れるのかが、よくわからないことです。
これについては、逆に「実感できる」という例を挙げればわかるでしょう。例えば、移乗介助支援の装着型のロボットの場合、デモの際に自ら装着して重たいモノを持ち上げてみれば、非装着時と比べて「楽にもち上げられる!」「これなら腰に負担が掛からない!」と、違いを容易に実感できるはずです。
「実感できない!」という課題への対応については、ヨソの業界に習って、「顧客の声」「顧客の活用事例」をわかりやすく紹介するなど、リアルなユーザーに協力してもらう方法が良いでしょう。
また、モノを手にしなくても「これなら買いたい!」と人に思ってもらう手法に長けた業界を参考にすべきです。例えば「ジャパネットたかた」などテレビ通販の販売方法は非常に参考になるはずです。
ただし、注意点もあります。それは、実証実験などの結果を難しい手法や横文字を使ってアカデミックっぽく見せるような場合です。
売り手は、「ウチのロボットは凄いだろう!」というつもりかもしれません。ところが、潜在顧客には「実感できる!」とは逆に、「難しい!」「理解できない!」と判断されかねません。やはり、「わかりやすさ」がポイントです。そういう点からもテレビ通販が、どう演出しているのかを勉強するのが良いでしょう。
これは、似たような機能を有する見守りロボットがいくつもあり、素人にはどれも同じように見えてしまい、違いがよくわからないということです。
しかも、メーカーが細かな機能についてあれもこれもと説明すればするほど、あまり知識がない潜在顧客は混乱するばかり。聞きなれない専門用語を耳にした時点で無意識ながらも拒絶反応を示す人も少なくないのです。
そこで、「他との違いがわからない」という指摘を解決するためには、自社ロボットを良く見せようとして「あれができます、これもできます!」といくつもの機能を訴求するよりも、自社ロボットが競合他社に比べて明らかに際立っている1~3点をフォーカスし、それだけを徹底的に訴求した方が、潜在顧客の頭にすっと入るはずです。
同様に、マーケティングで使われるUSP(Unique Selling Proposition)を考えておくべきです。
多くの施設ではナースコールをはじめ、何かのシステムが既に導入されています。そのために、新たなシステムを導入する際は、「既に導入されている〇〇システムとの併用ができるのだろうか?」という不安に襲われます。施設にとって、複数システムを、それぞれ別々に管理・運営することはかなり面倒です。
そこで、潜在顧客の不安を払拭するためには、あらかじめ既存システムとの併用についての「説明方法」を準備しておくべきでしょう。
これは、「他との違いがわからない」とも関連しますが、「価格が高いのか?」「安いのか?」という判断が難しいということです。
例えば、私たちが買い慣れている500mlの水(ペットボトル入り)が40円で売られている値札見れば「安いな!」と判断する一方、1,500円の値付けには「高いな!」と瞬間的に判断するはずです。
もし1,500円の値付けをする場合は、普通の水との大きな違いを上手に、法律に触れないように訴求できない限り、「高い!」と潜在顧客に一蹴されてしまいます。
これが買い慣れていないロボットの場合、相場がわからず、何かと判断が非常に難しいようです。だから、競合他社のロボットよりも安ければ「安い理由」、逆に高ければ「なぜ、高いのか?」をわかりやすく説明するべきでしょう。
とにかく、潜在顧客(ユーザー)の目線で、自社ロボットの訴求ポイントを絞り、わかりやすく説明することが何よりも重要です。
まもなく公開予定です(近日公開)