2017年 2月 18日(土)
【キーワード】
私はこれまで介護ロボット関連のイベントに何回参加したでしょうか? 講演にお呼びいただいた数まで含めると相当な回数になります。自身で企画・運営した回数だけでも2010年から合計20回は超えています。
また毎回、アンケート用紙を配付・回収し、「参加者は何を望んでいるのか?」「何が参加目的なのか?」「何に満足しているのか?」などについてよく確かめています。
回によって客層は多少異なりますが、もう20回以上も企画・運営した経験から、ハッキリとわかっていることがあります。今回のコラムでは、その中から重要な3点を紹介します。
本題に入る前に1点だけ補足しますが、介護ロボット関連のイベントの参加者は大きく2つのグループに分けることができます。
1つはロボットの開発や販売などに関わる民間企業や研究機関に所属する人のグループです。もう1つのグループはロボットを使う介護施設の関係者です。
一般市民にまで広く告知すれば第3のグループが現れますが、私が過去に開催したイベントの参加者は、そのように2つのグループに分けることができます。しかも2グループの特性がそれぞれ大きく異なるのです。
では早速、下記の通り3点を紹介します。
その1)
共通して評価が高いのは使用者の生の声
介護ロボット関連のイベントは、一般的に講演、ディスカション、ロボットの展示・説明などから構成されます。アンケート集計を行う度に痛感するのですが、企業グループと施設グループの双方から常に求められる内容は使用者の生の声です。
もっと正確に書くと、「生の声」というよりも「本当はどうなのか?」「本当に現場で使えるのか?」などと「本当の実態を知りたい!」ということです。
そのためか、「同じ事実」を伝える場合であっても、企業担当者が自社ロボットの説明をするよりも、施設担当者の口から発せられる少しマイナスの情報の方が、遥かに信ぴょう性が濃いと判断されます。
また、もっとも高く評価されるイベントはロボットの導入現場で開催し、実際の活用に関わった人と限られた人数でディスカションを行う「場」の提供です。
その2)
ウケる講演は泥臭い現場の苦労話
これはその1)に関連するポイントです。登壇する講師の話によって評価が異なりますが、常に高い評価を得るのは泥臭い現場の苦労話を語る人です。ロボットを活用してみたら、「このような苦労があった」「あのような点に非常に不満だった」のような類の話です。
このような類の話は特に施設グループからの要望であり、常に満足度が高いのです。その理由は、恐らく感情移入できるからでしょう。
逆に、統計データ、学術的な内容、国や自治体の施策などの話については、ほどほどにしないと、特に施設グループの人からの評価が低くなります。
こういう点からも、施設の人の心を動かすためには、立派な肩書を持つ人がアカデミックな小難しい話をするよりも、施設と同じ目線の人に語ってもらう方が共感を得やすいことは明らかです。同じ事象であっても、「語り手は誰か?」という点が聞き手の評価に大きく作用するようです。
その3)
テーマが絞られるほど満足度が高い
介護ロボットには実にさまざまな種類があります。移動支援、移乗支援、見守り、コミュニケーション…と。実はこれら全てを括って「介護ロボットセミナー」という大きなテーマで開催するよりも、1つのサブテーマに特化した方が、参加者の満足度は総じて高くなります。
これについては「移動支援」や「見守り」などと機種タイプを絞るやり方があります。また、企業担当者を対象に開催するのであれば、開発、マーケティングなどと「(業務の)機能面」を絞る方法があります。あるいは、「これからロボット市場に参入する…」と企業の「活動段階」を絞ることも可能です。
企業グループの人の一部には自社製品と機能が似ている製品(いわゆる競合製品)の情報にばかり興味を示す人が散見されます。そのような人は総体的な話に対しては「内容が薄っぺらい」と感じがちです。介護ロボットの市場がまだ非常に小さく、セグメント化するまでに至っていないので、多くの介護ロボッとセミナーは総体的な話になりがちです。
そこで、もし参加者から高い満足度を求めるのであれば、募集人数を少なくして特定のテーマを絞り深掘りする方法が良いでしょう。先述の通り、もっとも満足度が高くなるイベントは、ロボットの導入現場で開催し、小人数でディスカションする「場」です。
なお、「テーマが絞られるほど満足度が高い」ということはディスカションを行う際も同じです。多くの人をパネリストとして呼び、多くの人に発言の機会を与えるよりも、パネリストを少人数に絞り、テーマを深掘りした方が(満足という点においては)良いようです。
以上のようにテーマを絞れば絞るほど、ターゲットとなる客層が明確化される結果、それに合致する人だけが参加することになり、より高い満足度が得られます。
しかし、イベントを主催する側にとっては、多くの人数を集めにくくなります。それに税金の投入により開催される自治体事業は、「無料」開催のケースが殆どであり、対象はどうしても「浅く、広く」になりがちです。
参加する人は自分の関心があるテーマを扱って開催してくれるイベントを好みがちです。でも、無料で参加できる自治体主催のイベントはどうしても「浅く、広く」なるのです。そのような点を承知の上、1つでも「学ぶこと」や「新しい発見」があれば十分に満足すべきではないかと思います。
【No.50】公務員の常識を覆すDX戦略の現場から
【No.49】地方創生マネーの実態と課題
【No.48】地方自治体のデジタル変革:市民サービスの改善への道
【No.47】介護分野の労働危機を社会の転換点へと変える解決策
【No.46】介護予防事業の問題点と克服への道筋
【No.45】補助金が、自主性や積極的な改革の意識をダメにする?
【No.44】介護ロボの普及:国や自治体の補助金政策は何が問題なのか?
【No.43】コロナ禍で介護ロボットの普及は阻まれるのか?
【No.42】分厚いレポートと保険給付外の市場の可能性
【No.41】販売事業者は、どのようにセミナーを開催するべきか?
【No.40】製造業のサービス化が進んでいく中、介護ロボットは?
【No.39】縦割りの弊害とカニバリゼーション
【No.38】介護ロボットのセミナーやアンケートの活かし方
【No.37】介護ロボットの普及は「見える化」が解決してくれる
【No.36】介護ロボットの普及・市場開拓のブレイクスルー
【No.35】介護ロボットの買い手の効用を妨げているものは?
【No.34】平成31年度の補助金は早期争奪戦か?
【No.33】介護ロボットはキャズムを越えられるか?
【No.32】産業用と異なるからこそ必要なこと
【No.31】介護ロボット販売で先にやるべきこと
【No.30】成功への第一歩はメニューに載ること?
【No.29】 過去のターニングポイントと面白い取り組み
【No.28】 平成30年度の介護ロボット予算で気付いたことは…
【No.27】ロボット活用に向けた施策で最も重要なことは…
【No.26】市場開拓にレバレッジが効く「1対N」のアプローチ
【No.25】介護ロボット市場の開拓にも必要なユーザー教育
【No,24】誰が介護ロボット市場を制するか?
【No.23】介護ロボット代理店の苦労
【No.22】ロボットビジネスのセグメント化
【No.21】「ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画
【No.20】施設が補助金に飛びつく前にやるべきこと
【No.19】施設にとってロボットの導入で最も重要なことは?
【No.18】ロボットをロボットとして見ているだけでは?
【No.17】ロボット市場への参入は凶と出るか吉と出るか?
【No.16】ロボットセミナーの開催で判明した顧客のニーズ
【No.15】潜在顧客から見た見守りロボット
【No.14】介護ロボットは6年前より増えたが、その一方【No.13】見守りロボットは是か非か?
【No.12】介護ロボットを活用する直接的なメリット
【No.11】ロボットに頼らない活用方法は?
【No.10】施設の介護ロボット選定の実態は?
【No.9】介護ロボット市場の開拓には?
【No.8】補助金政策による光と影
【No.7】補助金のメリットとデメリットは?
【No.6】自治体支援策の特徴は?
【No.5】ハードだけではなく、ソフト面も必要では?
【No.4】介護現場にロボットを導入するための要件は?
【No.3】なぜ、「普及はまだまだ!」なの
【No.2】介護ロボットの認知度は飛躍的に高まったが
【No.1】介護ロボットの普及を電子カルテと比べると