2018年 2月 24日(土)

【キーワード】

  • 平成30年度予算
  • PDCAをまわせる組織
  • 独自性

毎年、今の時期になると自治体の次年度予算がほぼ固まります。そこで各自治体のホームページに公開されている平成30年度の予算関連の資料をさっとチェックしてみました。

介護ロボット関連については、積極的に取り組もうとする自治体がある一方、そうではないところがあります。また取り組み内容は同じにも関わらず、「ロボット」という表現を使わずに「ICTを活用して…」などと表記している自治体もあります。

とにかく、自治体の介護ロボット関連の取り組みについては大きく3つに分類することができるかと思います。それは「開発支援」「導入支援」「実証支援」の3つです。

 

1つ目の「開発支援」はメーカー向けのモノづくり支援で、主たる目的は産業育成・振興となります。

2つ目の「導入支援」は施設向けの支援であり、主たる目的は介護分野の課題解決です。介護人材不足を補う(生産性向上の)手段としてロボットが期待されており、その導入を促すための取り組みが行われているのです。

「導入支援」の取り組みで目立つのは地域医療介護総合確保基金を使った購入費の補助です。また購入費を補助するだけではなく、それに追加して介護ロボットの講演や展示のイベントを1-2回程度開催することを計画している自治体もあります。

3つ目の「実証支援」については、開発・モノづくり支援の一環として行なうものと、特定の機種をモデル指定した施設に導入して成果を検証するという施設向けの事業があります。

まり、支援先の対象として、メーカー(作り手)を意識しているか、あるいは施設(使い手)かという違いがあるのです。

そのように自治体からは様々な取り組みが発表されていますが、介護ロボットの普及には絶対に欠かせない取り組みとして、前々から痛感していたことがあります。

 

国では「エビデンス(証拠)が必要だ!」ということで介護ロボット活用の成果を実証・実験する動きがあります。確かにこれは国が介護保報酬改定の議論をする際などに必要な基礎データとなります。

しかし、もっと重要なことが欠けているのではないでしょうか? データ取りをして「●●が何パーセント向上しました!」などと学術的な評価をすることも重要ですが、それは「活用する」という「一見すれば当たり前のこと」が「できている」という前提条件をクリアした上での話です。

実証・実証のために、職員に無理に使ってもらい、体裁の良いデータを集めて報告書を作成することは可能です。しかし、実験のために我慢して使ってもらったものの、それが終了したら「実証実験が終わったので、ウチではもう使いません!」では全く意味のないことではありませんか?

これでは粗品(?)を貰った施設が、期間限定でデータ集めに協力しただけにすぎません。

しかも、そこで集めたデータが次なるアクションに活かされるようあらかじめ計画されていれば良いのですが、報告書を書いてオシマイ。

しかも次年度には課長も担当者も変わってしまい…新しい人は新たな提案をして…などと、戦略やロードマップがないまま政策が目移りする状態になっていないでしょうか?

本来であれば、施設の日々のオペレーションの中でロボットを日常的に活用してもらえるようにすることが必要です。データ収集時やお披露目のイベント時にだけ使ってもらうのでは意味のないことです。

そして施設が、ロボットを活用し、掲げた目標に少しでも近づくようになれば、それは素晴らしいことです。

掲げた目標を達成することができれば、購入する施設の数が増えることになります。また、それに比例するごとく出荷数が増えます。結果として売上増となりメーカーや販売店にとっても嬉しい限りです。

 

だから、学術的なデータ集めなど介護保険制度の見直しの基礎資料に使うような事案は国事業に任せておき、各自治体では深刻化する介護分野の課題解決に向け、むしろ地元施設のメリットや育成を優先した取り組みが必要ではないでしょうか? 

というか、縦割り行政なので仕方がないとは言え、国のマネごとをするごとく横並びで似たり寄ったりのことをするのではなく、もっと独自性を出して自ら棲み分けをしても良いはずです。

「施設は一体、何を求めているのか?」

「いつまでにそれを実現させたいのか?」

「(ロボットの活用によって)実現できるのか?」

「目標を達成するためには、ロボットをどう活用すべきか?」

「どうように実現できたかどうかを管理するのか?」

 

こういうことを明らかにした上で、目標達成に向けてロボットなどを上手に活用しながらPDCAをまわすことができる組織を構築することが重要なはずです。

PDCAをまわせる組織(施設)が構築できれば、仮にロボットの活用が初めのうちは上手くいかなくても、直ぐに軌道修正し、掲げた目標に向かって走り出すことができますから。

また、こういうPDCAをまわせる組織が構築できれば、ロボットの活用に限らず、オムツ代の削減、インフルエンザ発生時の緊急対応、施設のICT化など、今後も対応が迫られるあらゆる課題にスムーズな対応が可能になります。

ところが、組織(施設)運営を進めていく上で礎となる土台が脆弱だと新しい取り組みがなかなか浸透しないはずです。これは施設と深く関われば関わるほど私が痛感したことです。

脆弱な組織にモノを与えるだけの施策ではなく、土台を強化してあげる取り組みが必要ではないでしょうか? 

また「生産性が云々…」などと語る前に、その生産性を測るためのモノサシ(指標)を与え、その必要性や使い方などを理解してもらうための取り組み(教育)も必要です。