2019年 7月31日(水)

【キーワード】

  • 分厚い文書(レポート)
  • 横文字
  • PDCA
  • 保険外の市場
  • 施設向け→個人向け

本日は、前々から感じていたことを2つお知らせいたします。テーマが2つあるということです。1つは「介護施設に役立つ方法は何か?」、もう1つは「保険外の市場は魅力的か?」ということです。

「どうしたら介護施設に上手く伝わるのか?」

「どうしたら介護施設の職員が理解して動くようになるのだろうか?」

 

介護ロボットの普及活動に関わる人であれば、誰もがこのようなことについて少しは意識したことがあるはずです。

実は私、2016年の1月に「介護ロボット導入・活用の成功マニュアル」という介護施設向けの教材の販売を始めました。しかし、まる3年を過ぎた今年の5月下旬に販売を止めました。

止めた理由は、分厚い文書を提供(販売)することよりも、別の方法の方が遥かに成果に結びつくと痛感したからです。それに、シンクタンクや介護施設を対象に介護ロボット関連のビジネスを手掛けようとする企業・団体など、介護施設以外からの購入が過半数を占めていたからです。そこで、増刷することなく、在庫がなくなったタイミングで販売を止めました。

ところで、先月、ある人のブログをさりげなく読んでいたら、次のことが書かれていました。

『叩き上げの創業社長に分厚いコンサル資料と横文字が散りばめられた資料は受けが最悪です』

 

この意見に私は100%同感です。これは10年以上も前から私が痛感していたことでもあります。私は30歳前後の時、大手外資系企業で社内コンサルタントの立場で仕事をしましたが、その時に立派な資料を作成することを学びました。

しかし、その後、そのような資料は中小企業の社長に対して、非常に受けが悪いことに気づきました。ギャップが生じる原因になっていたのです。このことは介護施設に対しても同じでしょう。

 

横文字が散りばめられた(一見、立派に見える)資料は、大手企業のサラリーマンや役人にはとても受けが良いかもしれません。「賢い人だ」「優秀な人だ」と見られるかもしれません。

そのためか、外資系ではないにも関わらず、日系の大手コンサルティング会社やシンクタンクが作成する資料には横文字が目立ちます。例えば、ストラテジー、オフショア、ティア1、…と。彼らは、10年、20年前よりも横文字を好むようになっている気がします。今では部署名や役職名にも、一般人には理解できないようなカタカナが使われていることがあります。

しかし、そういうやり方は介護施設の職員には向いていないはずです。

つい先日、介護施設の職員向けに開催された講演を聴講したのですが、講師の人が「レイヤー」という表現をさりげなく使っていました。「階層という意味です」などと申し添えすることがなかったので、聞き慣れない横文字を耳にした介護施設の職員の多くは「エイヤー(えいや~)か?」などと思ったかもしれません。 

とにかく、横文字が散りばめられた資料は、介護施設向きではないはずです。また、分厚い文書(レポート)についても同様だと考えています。しかも、記載された内容がちょっとアカデミックっぽくなると、介護業界の人は「とっつきにくい!」と感じるはずです。

現に、私自身もシンクタンクなどが作成した分厚い文書(レポート)を始めから最後まで読んだことが一度もないことに気づきました。最後まで読んだことがあるのは3~4ページの短いレポートだけ。自分が作成した分厚い報告書(レポート)でさえも、かなり気合いを入れない限り、最後まで読むには骨が折れます。

「なぜだろうか?」「なぜ、分厚いレポートを読まないだろうか?」と自分なりに考えてみたところ、あることに気づきました。それを踏まえて、分厚い文書(レポート)の提供はよろしくないと判断したのです。

分厚い文書(レポート)を提供するよりも、むしろ対面式の研修をやってあげた方が遥かに良いと考えています。その方が介護施設の職員のためになると考えているのです。だから、私は施設向けの教材の販売を止めました。

3~4年くらい前から、介護施設の職員向けに、介護ロボット関連のテーマで分厚い文書(レポート、手引書など)が、公費でいくつも作成されるようになりました。でも、果たして「読んでもらいたい人」に読まれているのでしょうか? 使われているのでしょうか?

もしかしたら「作成する(委託する)こと」が目的になっていないでしょうか? 本来の目的を忘れ、大きな会社に委託することで安心していないでしょうか? 公費(大金)を使って、レポートの作成を担当する受託事業者や印刷業者の財布を潤すだけになっていないでしょうか? 

今、インターネットの世界では、アクセス数、滞在時間、離脱率など、さまざまなデータの入手が可能です。そういうデータを活かせば、迅速にアクションを見直すことが可能です。PDCAを回すことができるのです。

そのため、広告宣伝費の使い方が上手い企業では、大企業のようにいきなり新聞に全5段の広告を出すことはしません。まずはインターネットを駆使して原稿の表現について、いろいろと少額でテストします。そして、その成果を確認した上で、新聞などの紙媒体に出稿するのです。

公費を投入して作成される分厚い文書(レポート)についても、「読んでもらいたい人(介護施設の職員)に読まれているのかどうか?」「本当に役に立っているのかどうか?」について、カネを掛けることなく検証する必要があるのではないでしょうか? 

もしかしたら、役所の人を唸らせるだけの成果物になっているかもしれませんから。私が販売していた教材のように、主たる利用者は介護施設以外の人の可能性もあります。

ここから話は大きく変わりますが、約1カ月前、福祉用具の貸与事業者など50名ほどの前で、マーケティング戦略について講演する機会がありました。その後、懇親会があったのですが、複数の人から「先細り」と「保険給付外」という同じ言葉を耳にしました。

福祉用具の貸与事業者の中には、新しいテクノロジーの登場や国際化の影響を心配しており、国の介護保険制度に依存した事業の展開だけではマズイという気持ちを強く持たれている人が少なくないことがわかりました。

ところで、介護ロボット関連の政策については、福祉用具の延長線上で検討されるケースが少なくないことを前々から痛感していました。人はどうしても過去の延長線上やこれまでの常識の範囲内で物事を考えがちなので無理もないかもしれません。また、ロボットの販売代理店の中にも、あくまで福祉用具の延長線上での販売を期待しており、保険給付を当て込んだ事業を検討している人が多いことを感じました。

実は、これまで介護ロボットの市場を見てきた限り、今のまま機種毎に売り切りするビジネスモデルで販売事業を展開しても、施設向けの市場を開拓する(収益を確保する)ことはなかなか難しいのではないかと考えています。敢えてここでは理由は述べませんが、気づきはじめている企業もあるはずです。

とにかく、何事においても常識や過去の延長線上で考えるだけではなく、意識的に少し視点を変えてみることが大事だと考えています。

そこで、ここでは少し保険外の市場に注目してみましょう。

日本には素晴らしい公的医療保険制度があります。高額療養費制度もあります。それにも関わらず、保険外の市場が賑わっています。

例えば、『No.40:製造業のサービス化が進んでいく中、介護ロボットは?』のコラムの中で紹介した美容医療分野の高須クリニッや湘南美容クリニックがあります。全国に87拠点ある湘南美容クリニックグループの売上は300億円超とのこと。この数字は今の介護ロボットの市場規模を凌いでいます。

前々から感じていたのですが、今後、介護ロボットの中から高額なハイエンドな製品が出てくるはずです。それは100床あるような大規模な施設でも1台か2台しか売れない製品かもしれません。

そのような製品の場合、他の販売代理店と足並みを揃えて同じように施設向けの活動ばかりを行っている限り、日の目を浴びることがないかもしれません。というか、売れても1台なら、施設向けに活動を行うこと自体が非効率ではないでしょうか?

資金力があっても大きな組織に「新規で」何かを販売する場合は、難しい面が多々あります。中でも大きなことは、決める人(カネを動かせる人)と実行する人(買ったモノを使う人)が異なることです。

その間に仲介・つなぎ役(中間管理職)がいることも少なくありません。おまけに一人だけではなく、複数人いる(複数の階層がある)ことが一般的です。そのため、組織中の調整に時間が掛かり、なかなか前に進まない(決められない)ことがよくあります。どこの業界でも、大きな組織では同じです。

根回しをしながら準備を進めていたにも関わらず、最後にトップに反対されて「ふりだし」に戻ってしまうことも。そうなると、振り回され続けた挙げ句の果て、販売代理店の売上は「ゼロ」です。それまでに費やした時間(デモ、見積書の作成など)はサンクコスト(埋没費用)になるだけ。

また、介護ロボットの場合は、トップが「これが良い!」と判断し、導入しても、使う側の現場がまるで乗り気でないケースもよくあり得ます。

 

一方で、決める人(カネを動かせる人)と実行する人(買ったモノを使う人)が一緒の場合は、上に書いたような無駄が生じません。即決のケースも少なくないのです。

BtoCのノウハウに長けた商売の上手い企業では、見込み客を対象にセミナーを開催することがあります。そして、「本日、お申込みの方には特別に10万円引きで…」などと巧みに販売するケースをよく目にします。

要は、(来場者に対して)セミナー会場から退出する前に申し込ませてしまうというちょっとズルいやり方をしているのです。この方法は、決める人と実行する人が一緒である個人や零細事業者を対象に商売している企業や個人事業主が、よく活用しています。

個人の中には、100万円、300万円、500万円もの金額でも即決できる人は、意外と大勢いますから。あとはいかに低コストで、「困っていて、支払いが可能な人を見込み客として見つけてくるか?」となります。

そういう意味において、何かと時間が掛かり非効率的になりがちな施設にアプローチすることよりも、「困っていて、支払いが可能な人」を効率よく探し出して販売することを検討した方が良いと考えています。

 

なお、介護ロボットの販売に関しては、安全性の問題なども考慮しなければなりません。そこで、個人(在宅向け)に直販するのではなく、一部の企業が行っているように専門機関を活用しながら専門家の指導の下で使用してもらう方法もあります。

とにかく、他の販売代理店と同じ視点から、同じような活動を横並びで行うのではなく、意識的に少し視点を変えてみてはいかがでしょうか? 「保険給付→保険外」や「施設向け→個人向け」などと視点を変えて考えてみることで新たなビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。

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【No.41】販売事業者は、どのようにセミナーを開催するべきか?
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【No.39】縦割りの弊害とカニバリゼーション
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