2019年 5月30日(木)

【キーワード】

  • セミナー
  • 自社で開催する
  • 他人の企画に便乗する

本日のコラムは、介護ロボットの販売事業者向けの内容となります。

これまでに私が見てきた限り、多くの販売事業者は一生懸命に販売(セールス)の活動を行っているのですが、マーケティングはあまり行っていないようです。というか、マーケティングと販売(セールス)を同じ活動と捉え、区別ができていない人が多いのではないでしょうか?

販売(セールス)とは、自社が売り出すロボットの特徴、機能、使い方、利点、価格などについて語ることです。ロボット機器の活用事例について語ることも販売(セールス)となります。

一方、マーケティングの仕事は、ロボットを提示する前の段階において、買い手の欲望を生み出すことです。「売り込みのためにお膳立てをすること」とも表現できます。見込み客の心の中にある種の考えを作り出すことです。そうやってマーケティングが上手くできれば、売る込みをする必要がなくなるのです。

今年の2月にアップした「No.38 介護ロボットのセミナーやアンケートの活かし方」のコラムの中に書いた通りですが、多くの業界で活用されている、とても有効な集客方法があります。

それが「セミナーの開催」です。当然ながら介護ロボットを販売する目的においても、上手にセミナーを開催すれば、素晴らしいマーケティングを展開することが可能です。

そこで今回は、「介護ロボットの販売事業者は、どのようにセミナーを開催すべきか?」ということに関して、少しだけですがポイントをお伝えします。

セミナーの開催については、大きく2つの方法があります。これはどこの業界でも同じです。1つは自社で開催することです。もう1つは他人の企画に便乗する方法です。それぞれにメリットとデメリットがありますが、それをここで細かく説明すると文章が非常に長くなるので止めておきます。

自社で開催することの最大のメリットは、コントロールと再現性です。場所、開催日、時間、開催回数、講演者など、全てを自社の思い通りにコントロールすることができます。好きなように演出できるのです。だから、よく会場内での物品販売などが、ごく普通に行われます。私が過去に聴講した中には、かなりライブっぽいセミナーの演出をした人もいました。

そして、「これで行ける!」というパターンを一旦作り出せれば、あとは自社の都合でいつでもそれを再現することができます。

セミナーの開催については、上手い・下手の差が実に大きいのです。おまけに、それは殆どの人には「よく見えない(わからない)こと」です。そのために、集客の時点でつまずいてしまうセミナーの主催者が少なくありません。下手な企業の場合は、表面的にヨソの真似ごとを行っても「人が来ない!」「コストばかり掛かる」という事態に遭遇します。

ちなみに、セミナーを開催する際の上手い・下手は、大企業とか零細企業とか関係ないのですが、小さな会社の方が上手いケースが遥かに多いというのが、私の実感です。

一方、他人の企画に便乗する方法については、イベントの開催者が用意したスペースをスポット的に借りて、自社のロボットを「展示する機会を得る」ケースが一般的です。見込み客になりうる介護施設の職員が集まるイベントに「展示の場」や「説明の時間」を間借りするのです。これは、新聞や雑誌の広告枠を買う行為と似ています。

一見すると、他人の企画に便乗する方が手っ取り早く、簡単そうです。セミナーを単発のイベントとして捉えている限り、まったくその通りです。しかし、長期的な視点で「集客する(成約につなげる)」という目的を考えると、必ずしも良い方法ではないのです。

では、「自社で開催する」のと「他人の企画へ便乗する」のは、どちらが良いのでしょうか? 一概には言えないのですが、私が調べた限り、商売が上手い会社ほど「自社で開催すること」に力を入れています。

基本は「自社で開催する」というスタンスなのです。自社で開催し、上手くまわせるようになれば、もう他人の企画に頼る必要がなくなります。自社で何かとコントロールできるようになるからです。

ところで、もし貴社が自社でセミナーを開催するのであれば、その目的は何でしょうか? そこにはいくら投資するのでしょうか? それによって、どのタイミングに、どのような形でリターンが期待できるのでしょうか?  

結局のところ、こういうシナリオを十分に検討しないまま、漠然と単発のイベントとして開催すると、意味のないセミナーと化すはずです。それでは、よくありがちな「開催すること」が目的になってしまうのです。

No.31 介護ロボット販売で先にやるべきこと」のコラムで述べた通りですが、そもそもセミナーを開催する際は、目的を明確にしなければなりません。これは、行政主催のイベントなど「他人の企画に便乗する」場合でも同じです。また、「今すぐ客向けなのか、あるいはこれから客向けなのか?」ということくらいは、よく認識した上で開催すべきでしょう。

おそらく、公費で開催される一般的な介護ロボットのイベントに来場する介護施設の職員の90%以上は、「これから客」の人たちかと思われます。それにも関わらず、多くの販売事業者は「今すぐ客」向けの対応をしています。

ちなみに、「今すぐ客」は、「できれば購入したい!」という気持ちがある程度固まっており、機種をAにするか、Bにするか、それともCにするかなどと悩んでいる人たちです。そういう人たちには、セールスを行えば良いのです。機能面や価格の違いを詳しく教えてあげれば良いのです。

一方、「これから客」は、「興味はあるのだが…」という感じの人たちです。まだ、あらゆる面で漠然とした人たちです。こういう人たちには、機能面や価格の違いの説明ではなく、もっと前の段階、つまりマーケティングが特に必要になるのです。

とにかく、「今、目の前にいる人は、集客プロセスのどこに位置にいるのか?」ということをよく常に意識した上で、「だから、この人(施設)には今、何をしてあげるべきか?」と判断するべきでしょう。皆に同じ情報を出すのではなく、情報の出し分けが必要なのです。

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