介護ロボットの着眼点(No.21)

【キーワード】イベント企画・開催、マーケティングに長けた民間会社のイベント

2017年 7月 8日(土)

介護ロボットコラム021: ニーズの違い(バラツキ)」とイベント企画

介護ロボットのイベントを企画・開催する度に痛感することがあります。それは、ロボット分野の中でも「介護ロボット」にフォーカスし、一見するとテーマが絞られていても、イベント参加者のニーズは人によってマチマチであるということです。

「作り手」と「使い手」、つまり「企業の人」と「施設の人」の温度差がとても大きいことは前々から理解していました。そういう温度差の大きな人たちを一同に集める限り、片や「かなり満足」でも片や「かなり不満」になることがあります。

 

また、「企業の人」の間でも、「自社が得意とする要素技術を何かに活かせないか?」という意識で参加する人と、販路開拓や名刺集めが目的で来る人ではニーズが大きく異なります。名刺集めが目的な人は、登壇する講師の話などにはハナから興味がないことも。

 

同様に、「施設の人」のニーズもマチマチです。なんとなくロボットに関する情報収集に来た人であれば、イベントで見るモノ(ロボット)・聞くコト(話)は全て新鮮に感じるでしょう。

逆に、そうではなく、ある特定の機種にだけ興味がある人も少なくありません。

そういう人の場合、ある特定の機種はお気に入りでも、「見守りロボット、あれは身体拘束だ!」「コミュニケーションロボット、あんなのと会話させるとは、まやかしだ!」などと否定的な先入観を持っていることも。機種に対する好き・嫌いが激しいのです。

一旦話は変わりますが、マーケティングに長けた民間会社では、集客活動の一環としてイベントを開催します。イベント開催の目的はあくまで次なる商品・サービスの販売へ繋げるためです。

そのため、より多くの参加者に満足してもらおうなどという発想はあまりなく、「どれだけ効率的に次に誘導できたか?」という「費用対効果」の指標を重要視します。

イベント開催(投資)によって、次なる商品・サービスにどれだけ効率的に誘導させることができたか? 

これが全てです。上手な会社は、企画の段階からターゲットを明確にし、費用・講師・一緒に組む(コラボする)相手・会場・配布資料に至るまで実に巧みに設計します。

 

一般的に、多くの人は「(料金を)安くすれば、より人が集まる」と単純に考えるようです。

確かに単なる「人数集め」が目的であれば、それは正しいのです。しかし、「(料金が)安い=ショボい」「売り込み目的か?」などと見られることにもなります。

逆に、特定層にターゲットを絞り、1人に1日で3万円どころか10万円以上の高額セミナーを売る会社では、立派を装い、狙うべき客層を絞り込み、高い参加料を設定します。

 

低額でセミナー開催することは、人数集めができても、自社(あるいは講師)のブランドイメージを損なうことにもなりかねないので避けるのです。このような行いは、高い料金をチャージする経営コンサルタントなどにも見られます。

彼らは商工会議所のような無料で参加できる場で講師を務めることを好みません。理由は、自身のステータス(地位)を下げることになると考えるからです。「(料金の)安い人=大したことない人」と思われたら、激安店のコモディティ化した商品のように見られてしまいます。

だから「100名の中に1人でも30万円を払ってくれる人がいれば、わざわざ料金を1万円に下げて15人を集めるような行為」はしないのです。

 

話は戻りますが、先に紹介したような民間企業と異なり、行政のイベントの多くはテーマがあっても大衆向けです。しかも「無料」であるため、なんとなく軽い気持ちで参加する人も少なくないようです。

そうなると、当日の参加者のニーズがバラツキがちです。参加人数が多ければ多いほど「不満」な人も出てきます。

 

「タダで参加させてもらっているのだから、何か一つでも学ぶことがあれば、それで十分に満足するべきでは?」というのが私の考えですが…。

お金を1円すら出していない人が集まり、ニーズがバラつくイベントでは、参加人数が多ければ多いほど「不満」な人も増えるはずです。

さらに最近、改めて認識させられたことは「在宅で介護に関わる人」と「施設の職員」の意識の違いです。

「在宅で介護に関わる人」はどうしても自身の家庭内における介護が比較の基準であり、家族という特定個人に対する強い想いから物事を判断します。

一方、施設の職員は「組織」の中で仕事をしているので、職員同士のコミュニケーション不足や人間関係に悩まされます。限られた時間内で多様な業務を処理しなければなりません。また、生産性や業務の見直しなどに対する問題意識もあります。

 

そのため、同じ「介護業務」に携わっているにも関わらず、使う環境や条件が異なるので、「介護ロボット」という同じモノを見る際に、見える景色が異なるのです。

 

また、参加者のニーズがマチマチであるイベントにおけるアンケート調査においては、「そもそも参加の目的は何だったのか?」をよく確認した上で、満足度を問わなければならないでしょう。単に「満足」「不満足」のチェックを入れてもらうだけのアンケートを実施したところ、本当のところが見えないままだからです。

例えば、登壇する講師の話がどんなに素晴らしくても、参加者の目的(ニーズ)と合致していなければ、講演に対する評価は「☓(バツ)」になります。

このような場合、イベントの企画(ターゲットの設定)や告知内容が上手くできていなかったことが問題の原因にも関わらず、「あの講師はダメだ」などと片付けられてしまいがちです。

 

また潜在顧客(参加者)から「これは自分向けのモノではない」と思われたらアウトです。だからこそ、企画の段階からマーケティングで使うSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を意識することが理想かと思われます。でも大衆向けの行政のイベントには、そういう発想がないケースが多いようです。

 

単なる人数集めや開催することが目的のイベントなら仕方ないですが、本来なら、どういう人に、どういう目的で参加してもらうべきかを企画の段階から明確にした上で決めるべきでしょう。

「介護ロボット」という同じ言葉を使っていても、置かれている状況が異なれば、「見える景色」や「気になる世界」は人によってマチマチなのですから。

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