• 施設が最初に取り組むべきことは、いきなりロボットを導入することではありません。「いきなりロボット」は愚策です。
  • まずは、新しいツール(例:ロボット)を組織の中で活用する際に必要となる土台を強化することです。さもないと、次から次に登場してくる技術やツールに関する情報に振り回されるだけですから…(続く)

ところでなぜ、介護ロボットを導入するのでしょうか? なぜ、ロボットやICTなどの新しいツールが必要なのでしょうか?

  • 利用者さんに満足してもらいたい!
  • 利用者さんの自立支援を図りたい!

  • 介護の質を向上させたい!

  • 職員の身体的負担を軽減させてあげたい!

  • 人手不足解消の解決策として!

このような理由から意気込んで導入を検討するはずです。しかし、3カ月・半年・1年と時間の経過と共に、積極的に活用するどころか、逆に使われなくなってしまうケースが少なくないのです。

お金の問題さえ解決すれば「導入すること」は容易です。しかし「活用し続けること」は意外と難しいのです。そこで、まず「介護ロボットを導入しても上手くいかない例(介護ロボット導入の努力事例)」を紹介します。

次に「介護ロボット導入の好事例」を紹介します。

介護ロボットを導入しても上手くいかない例として最も多いと思われるのが、「担当者(職員)を決めたが、後は何も決めていない」というケースです。「あなたが担当だよ!」と施設長さんや事務長さんに言われて一任され…

これはトップダウンではなくボトムアップで意思決定した成功例の一つとして紹介します。A施設では、施設内で課題として扱うべきテーマ(例えば、「紙おむつのムダを無くす!」)が決まると、…

  • 名前を付けてあげる 名前の候補を広く、利用者さんの家族からも受け付ける 家(ハウス)を用意してあげる 「パロ君 富山県出身」 介護スタッフの一員のように扱う…

ロボットやICTを施設に導入するということは「組織」の中で活用していくことを意味します。在宅とは環境や条件が異なります。

在宅であれば、個人(家族)が「これが良い!」と判断すれば、それが(その家庭内では)正しいことになります。

機能面がどんなに優れた製品だとしても、「私はまだ80歳なのに、そのデザインはまるで90歳のおばあさんみたいだ!」などと、使用する本人(個人)から拒絶されてしまったら、それまで。

また、本人や家族に経済力があれば、高い買い物であっても、その価値さえ認めれば価格はあまり気にならないはず。

時間に余裕があれば、身内の人とおしゃべりしながら、あるいは一緒にテレビをみながらノンビリと移乗介助をしても構わないのです。

このように在宅の使用においては、個人(家族)の判断が全てです。

一方、施設という組織の中には多数の職員がいます。価値観・考え方などが人によってマチマチです。資金や人員などにも制限がある中、一定範囲内の人員で時間内にあらゆる事に対応しなければなりません。

だから、異なる価値観や考えを持つ職員との間で、活用する「目的」や「目標」を共有しない限り、それぞれが好き勝手なことを主張し、バラバラに動き出し、途中で頓挫する原因になります。

また、利用者さんやその家族から賛同を得る必要もあり、そのような調整も重要です。

「組織の中で」介護ロボットを上手に導入・活用するために必要なことは、下記の通り2階建ての図を使って説明することができます。

2階部分は「機種別のノウハウ」となります。これには機種別に求められる「機能の理解」「操作方法の習得」「活用方法の理解」「対象者(利用者)の選定」などが該当します。殆どの人はこの2階部分だけに注目します。

2階部分については、一定の努力は必要ですが、ロボットメーカーや販売業者の支援があれば介護実務に長けた施設であれば、自らの努力で十分に遂行できるはずです。

もう1つが1階部分の「全機種に共通のスキル」となります。これはロボット(機種)を導入し、活用していくに際し、機種に関係なく共通して求められる「土台」となります。

「土台(=全機種に共通のスキル)」については、法人の「理念」や「介護サービスの基本方針」といった価値観や方向性に合致するようロボット活用のあり方を明確にした上で、目標を掲げ、その実現に向けて体制を整えて、仕組みをつくり上げることです。

組織の中でロボットを上手に活用するためには、明確な目標を掲げ、それを職員たちと共有することが求められます。また目標の実現に向けて、体制をつくり、計画したことを実行に移すことが求められます。

なお、この1階部分には、マインド面も含まれます。なぜなら働いている人たちが「業務をよくしよう」といった前向きの気持ちから行動を取らない限り、何も変わらないからです。

さらに、「計画したことがちゃんと実行できているか?」「実行して成果が出ているか?」ということを管理しなければなりません。

要するに、介護ロボットの導入・活用は、施設内で後にプロセスとして定着(日常業務化)するまで、1つのプロジェクトとして取り組むことが理想です。

だから、目標を決めて、そこへ到達するために、チーム(関係職員)をまとめ上げ、戦略的かつ計画的に適切なロボットやICTなどを上手に活用し、業務プロセス全体を改善しながらゴールへと導いていくのです。

1階部分に必要なスキルをもう少し分解すると、「介護業務(オペレーション)の構築」「プロジェクトマネジメント」となります。

介護業務(オペレーション)は、介護職員とロボットやICTなどによって支えられた業務連鎖です。「介護業務(オペレーション)の構築」は、今の「仕事のやり方」をより良くするために必要なのです。

施設全体を見渡し、ムリ・ムダ・ムラなく一連の流れをより効率的に、よりスピィーディに、より正確に行えるよう、業務の流れを見直すことです。

それには、5Sと呼ばれる整理、整頓、清掃、清潔、習慣化(躾)を行うだけではなく、業務プロセスを改善するスキルが求められます。

当然ながら、業務の中には、人手で行うよりもツールを使った方が良いプロセス(業務)があります。そこにロボットやICTを上手に導入・活用しながら新しいオペレーションを構築していくのです。

また「プロジェクトマネジメント」は、上に書いたように、目標を決めて、そこへ到達するために、チーム(関係職員)をまとめ上げ、問題解決→ゴールへと導くために必要なスキルです。

先に述べた介護業務(オペレーション)の構築を行っていくためには、プロジェクトマネジメントのスキルが必要なのです。

繰り返しますが、2階部分のロボット機種別の「機能の理解」や「操作方法の習得」は重要です。しかし1階部分の「土台づくり」の強化が、2階部分の「機種別のノウハウ」を活かすことになります。

ロボット化やICT化とは、これまで人の手でやってきた業務(プロセス)の一部にツールの力を借りる(てこの原理を使う)ことです。そこで「新しい介護業務(オペレーション)の構築」を行うための手段として、ロボットやICTを活用するという選択があるのです。決して「使うこと」が目的ではないのです。

なお、ロボットやICTを使うことにより、身体的な負荷の軽減になる一方で、これまでにはなかったプロセス(手間)が生じることがあります。つまり、身体的な負荷の軽減にはなる一方で、生産性が低下するケースがあります。

そういったメリットとデメリットを踏まえた上で、「どのロボットを、どの業務(プロセス)に、どう活用すべきか?」などを経営判断していくのです。

今後は新たな技術が次々に登場します。また、少子高齢化に伴う深刻な人手不足に対応するため、ロボットやICTの活用がますます求められます。

しかし、そのようなツールを組織(介護現場)の中で上手に活用するためには、上に書いた「土台づくり」の強化が不可欠なのです。

繰り返しますが、土台が脆弱なままだと、ロボットやICTなどの新しいツールを導入しても、組織の中で上手に、継続的に活用することが難しいはずです。一時的に、見せ物のように使うことは容易ですが…。

土台が脆弱だと、ロボットやICTの活用に限らず、新しい「取り組み」や「決めごと」が組織の中へ浸透していかないのです。

介護ロボットは決して安い買い物(投資)ではありません。だから、「単なるツールとして導入・活用」するだけではなく、せっかくなら法人の理念などを踏まえた上で、「経営戦略の視点から導入・活用」を目指すことが望まれます。

今後、AIやIoTの普及が本格化します。ロボットもAI搭載でロボット同士がコネクトする(つながる)時代を迎えます。

だからこそ福祉用具の延長の発想で、単なるツールとして「点」のごとく局所的な成果を狙うだけではなく、もっと広い視点から(つまり「面」のごとく)活用方法を工夫してみるべきなのです。

(冒頭の続き)

  • 理想は、2~3年先を見据えた目標を掲げ、そこに到達するため、段階的に業務全体のプロセスを改善する計画を立案することです。
  • 「部分」ではなく「業務全体」を俯瞰した上で、プロセスを改善していく計画です。しかも、職員の育成も同時に進行させます。
  • 計画の中にロボット化・ICT化の予定を組み込むのです。しかも、一度にド~ンではなく、計画的かつ段階的に導入することがポイントです。
  • そして、ロボットやICTを活用し、PDCAを回しながら業務プロセスを改善していきます。新しいオペレーションを構築するのです。
  • だから、まずは2~3年先を見据えた計画の立案が必要なのです。また、そのプランを組織内で実行していくためには、仕組みづくりやスキルの向上が求められるのです。
  • まとめると、いきなりロボットに飛びつき、(機器の)操作方法を覚えて無理に使うのではなく、オペレーションの構築というロボットやICTを駆使するための「土台」であり「基盤」を築き上げ、それを強化するに努めることです。施設内で業務の改善を推進していく仕組みづくりの一環として、ロボット化・ICT化に取り組むのです。

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