2020年 5月 1日(金)

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今、世界中が大変なことになっています。新型コロナウイルス感染の拡大です。中国の武漢市を中心に発生し、短期間で全世界に広がりました。

ロックダウンと呼ばれる都市封鎖が海外では起こり、日本でも緊急事態宣言が出され、今日まで続いています。これは50年以上も生きてきた私にとって初めてのことです。

この4月に入ってから私たちの日常生活は大きく変わりました。例えば、都心へ向かう通勤電車については乗車率が大きく下がり、「満員」から「ガラガラ」の状態に一変しました。大企業を中心にテレワークが一気に進んだからです。

今はコロナ一色の毎日ということもあり、You TubeやFaceBook Liveなどを通じて「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」といった表現を使って、「将来はこうなる!」という類の情報を発信している人が多くいます。それらの情報はまさに玉石混交です。

そこで、今回のコラムでは、さまざまな人の意見を参考にしながら、「コロナ禍で何が変わったのか?」という過去の話からスタートします。そして、「収束後はどうなるのか?」と未来に話をシフトし、最後に「介護ロボット業界はどうなるのか?」というテーマで、対象分野を絞って展開していきます。久しぶりのコラムですが、最後までよろしくお願いします。

最初は「コロナ禍で何が変わったのか?」という過去から現在までの話になります。新型コロナの感染拡大の影響で最も大きく変わったことは「人との面会が難しくなった」ということです。「3密を避けよう」「Stay Home」というフレーズが毎日、朝から晩までさまざまな媒体を通じて耳に入るようになりました。

その結果、先にも書いた通り、企業のテレワークが一気に進み、Zoomなどを使った会議が多くの企業で行われるようになりました。Zoomで会議などやったことがなかった零細企業までも、やらざるを得ない状況に追い込まれたのです。

また、TV番組をみると、コメンテーターが(スタジオからではなく)自宅からZoomなどでトークに参加するようになりました。

さらに、セミナーや研修などのイベントが2月下旬から相次いで中止になりました。「人が集まること」を利用して稼いでいた企業や団体の仕事はあっという間になくなりました。

イベント関連の企画・運営や委託先の企業はもちろんですが、講師業の人たち、それにイベントに集まった人と人をマッチングさせて稼いでいた人たちなどの仕事がなくなりました。いきなり、今年の1~2月まで普通に行われていたビジネスモデルが通用しなくなったのです。

その対応策として、例えばセミナーについてはオンライン化が進みました。わずか1~2カ月の間にオンライン開催が一般化しました。セミナー参加者の立場から見ると「会場まで足を運んで聴講する」かわりに「パソコンやスマホの画面をのぞき込む」だけの変化と捉えるかもしれません。

ところが会場に足を運んで売り込みや勧誘を企てていた人たちもいました。彼らにとっては、オンラインに代替されたら、本来の目的が達成できなくなってしまいます。なんとか会の「会員」になって、イベントに顔を出して行っていた営業活動が不可能になったら、これまでのようにわざわざなんとか会に会費を払う価値などなくなってしまいます。多くの企業が資金繰りにてんやわんやしている中、今後はお付き合いで会員になって会費を支払う余裕などありません。

このように、必ずしもオンライン化が全ての事業者に解決をもたらすわけではないようです。

次に、「コロナの収束後はどうなるのか?」ということについて考えてみましょう。これについては、「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」などと言いながら、好き勝手に将来の予測をしている人が多く、主張はバラバラです。

しかし、多くの人の意見として「もう以前の状態には戻らないだろう」という点では一致しています。一旦、コロナが収束しても、1918年から1920年に流行したスペイン風邪の流行と同じように、第二波、第三波が起こる可能性を示唆しながら、少なくても今後1年くらいはコロナ騒動が続くと思っている人が多いようです。

そのため、旅行、宿泊、飲食といった「人が移動すること」で稼ぐ機会を得ていた業種に限らず、先に述べた「人の集まり」を利用した商いについても、当面の間、大苦戦することになると思われます。

 

では、どうすれば良いのでしょうか? どうしたら生き残れるのでしょうか?

これについては、先と同様に、リアルの場に人を集めてマッチングを行う商売を例に考えてみましょう。このような商売には、婚活パーティの主催などがあります。10人以下を対象に開催するのであればOKかもしれませんが、40人、50人と多数を集めるパーティを企画すると、世間から常識を疑われてしまうでしょう。

また、クラスター感染を恐れる風潮が強い中、大々的な宣伝が難しくなるはずです。当然ながら、以前よりも集客に苦労するはずです。

そこで、一部の企業では「AIマッチング」のようなサービスを売り出し始めました。つまり、「人が集まる」というリアルの場におけるプラットフォームの提供から脱却し、オンライン上でそのような場を提供するSaaS(Software as a Service)と呼ばれるサービスを提供し、システムベンダーのような存在に変貌しようとしているのです。

ただ、資金力の限られた零細企業にはSaaSを開発する(開発を外注する)資金がないでしょうから、別の方法を検討しなければなりません。

とにかく、生き残るためには、このようにビジネスモデルの転換が求められているのです。

さて、ようやく本題に入ることになります。では、介護ロボット業界はどうなるのでしょうか?

私は今後、普及のスピードがかなりアップすると思っています。私が神奈川県事業で介護ロボットの普及・推進活動を開始したのが2010年。そして、2013年から国が本格的に普及に力を入れ始めました。

しかし、何年もの間、どこも公費を注ぎ込んで試行錯誤しているだけでした。2013年に「2020年に市場規模500億円!」と目標値を掲げたものの、普及については低空飛行。市場にいる「売り手」や「買い手」から支援事業者に至るまで、皆が公費に依存している状態でした。

今回のコロナ禍によって、介護施設も可能な限り、人と人の接触を避けるオペレーションに変えざるを得なくなります。

でも、「今すぐに」ということは難しいでしょう。なぜなら、今は介護施設でも新型コロナウイルスのクラスター感染が発生しており、どこも「感染者を出してはならない」とコロナ対策に必死だからです。介護ロボットに手を出している余裕などないのです。実証事業に協力する時間などないのです。

コロナの一件では、一般企業のテレワーク化が1~2カ月で一気に進みました。働き方改革も予期せぬ出来事の影響で大きく前進しました。この波に飲まれるように、今後は2015年頃から何かと話題に上がっていたデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが企業に浸透していくはずです。

そして同様の動きが、数カ月後からようやく護施設でも見られるようになるはずです。

これまでの低空飛行からようやく高空飛行へ、介護業界もロボット化へ向けて大きく変わっていくでしょう。ただ行政の改革がとても遅いと、その影響を受けることを懸念しています。

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